UH-1の後継になるはずだった
陸上自衛隊は「UH-1J」を長らく使い、事実上の主力ヘリとなっていますが、これを更新すべく、本来はブラックホーク・シリーズの「UH-60JA」をそろえるつもりでした。
ところが、高性能の代償として調達価格がはね上がり、全機更新とはなりませんでした。その結果、陸自は高価・高性能なUH-60JA、そこそこ安いUH-1を組み合わせて、「ハイローミックス(High-Low Mix)」を目指した形です。
- 基本性能:「UH-60JA」多用途ヘリ
全 長 | 19.76m |
全 幅 | 16.36m |
全 高 | 5.13m |
乗 員 | 操縦2名+同乗12名 |
速 度 | 時速265km |
航続距離 | 通常時:470km 増槽時:1,295km |
高 度 | 約4,500m |
装 備 | 赤外線暗視装置 赤外線抑制装置(エンジン排気口) チャフ・フレア射出機 ワイヤーカッター 12.7mm機関銃・5.56mm機関銃を設置可 |
価 格 | 1機あたり約37億円 |
UH-60JAは多用途ヘリですが、航空自衛隊の「UH-60(捜索救難ヘリ)」、海上自衛隊が「SH-60」哨戒ヘリと同じシリーズです。
その主目的は地上部隊をすばやく展開させる空中機動であり、地形に沿った低空飛行や攻撃回避の動きが求められます。この空中機動任務に対応すべく、UH-60JAは航法気象レーダーや自動操縦機能、電線・ワイヤーを切断するカッターを備なえました。
そして、ミサイル対策としてチャフ・フレア射出機を持ち、エンジン排熱を抑える工夫も行うなど、それなりの自衛機能を与えられました。
一方、空自の捜索救難ヘリとは異なり、空中給油機能はありません。これは陸地の上空を活動範囲とするのか、それとも広大な海を捜索するのか、という任務の違いから生まれたものです。
さて、UH-60JAには12名まで乗れますが、これら隊員は着陸後にすばやく展開、もしくはホバリング中にロープで降下します。このあたりはUH-1Jと変わらず、必要であれば、偵察用オートバイも搭載可能です。
輸送ヘリとしては申し分なく、エンジンを含む飛行性能も優れている分、その価格はUH-1Jの3倍以上になりました。
そのため、後継として導入しておきながら、わずか40機の調達に終わり、実際の後継機は新しい多用途ヘリ「UH-2」に委ねました。
災害派遣や急患輸送でも活躍
高価格とはいえ、優れた飛行性能がもたらす利点は多く、これまで災害派遣や山岳救難で何度も活躍してきました。
その能力は捜索や救助、物資輸送で役立ち、沖縄配備の機体は離島からの急患輸送にも使われています。ちなみに、沖縄の機体は高頻度で洋上飛行をするため、海上への不時着を想定したフロートを追加装備しました。
この沖縄でのUH-60JAといえば、第8師団長を含む10名が亡くなった事故が思い起こされますが、これは熊本に配備されている機体だったため、緊急着水用のフロートがありませんでした。
それでも、UH-60JAを含むブラックホーク・シリーズは高い安全性・実績を誇り、自衛隊のみならず、海上保安庁やアメリカ軍など、世界中で信頼されています。
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