「戦場の目」として不可欠
無人機(ドローン)は現代戦で欠かせない存在になり、情報収集から自爆攻撃までのあらゆる任務に投入されてきました。もはや「使い捨て」という扱いで、ロシア=ウクライナ戦争では小型民生品を中心に数千機単位で消耗されています。
では、実際の戦争でドローンはどのような位置づけとなっているのか?
まず、偵察から戦果確認までにいたるプロセスでは「極めて有効」と捉えられており、特に砲兵の着弾観測では必須装備になりました。ヘリコプターより探知されにくく、人員被害の心配がない小型ドローンはこうした任務には最適なのです。
一方、注目されがちな自爆型ドローンもそれなりの戦果を挙げたものの、攻撃手段の「主役」にはなれていません。
例えば、アメリカはドローンを「戦場の目」として重要視しながら、攻撃の主軸はあくまで榴弾砲などの火砲、そして機動打撃力に優れた装甲戦力であるとしました。
また、ロシアもナゴルノ=カラバフ紛争という勢力圏内での出来事、そしてウクライナでの自身の経験から、ドローンは偵察や囮、補助攻撃に投入しつつ、本命は火砲の集中運用というスタンスです。
つまるところ、米露両国のドローンに対する現状認識は、戦場での偵察・観測には長けているが、攻撃手段のメインとしては役不足というもの。ただし、実戦を経てドローンの攻撃能力が高まりつつあるのも事実で、かつての航空機と同様に今が「黎明期」になるかもしれません。
組織文化との相性
では、こうした米露両国の総括を受けて、自衛隊はどうするべきなのか?
日本はこうした新装備の導入が遅いと指摘されますが、自衛隊でもドローンそのものは導入済みで、航空自衛隊のグローバル・ホークや陸上自衛隊のスキャン・イーグルがよい例です。
そして、陸自に限っていえば、遠隔操縦観測システムという着弾観測用の無人偵察ヘリを2000年代から使ってきました。
このように導入自体は進んでいる一方、そのスピードや技術の点で遅れをとっているのは否めません。これは多種多様なドローンを大量生産している中国と比べると顕著で、研究開発と実用化では日本が追いかけている状況です。
このあたりはイノベーションが苦手、もしくはスピード感に欠ける日本の体質的な側面も関係していて、ドローン技術に限ったものではありません。
ほかにも、「消耗品」と化した小型ドローンを自衛隊がそのように扱えるかという疑問があります。自衛隊は備品(官品)を極めて大切にする「物品愛護」「徹底管理」の意識が強く、それは薬莢ひとつの紛失も許さないレベルです。
もちろん、これは血税を大切に使っている証ですが、行きすぎた物品愛護の精神はむしろ小型ドローンの運用を妨げる恐れがあります。
消耗品であるにもかかわらず、「官品」である以上は使い捨て扱いが難しく、訓練で紛失でもすれば面倒な後処理が待っています。
すなわち、組織文化的に自衛隊とドローンは相性がよいとは言えません。
さらに、民間向けの電波は基本使えないなど、電波法や航空法が自衛隊でのドローン運用を難しくしている側面もあります。
それでも、自衛隊への小型ドローンの配備は今後着実に進むでしょう。ドローンの有効性は決して否定できず、電波法も改正で乗り越えられます。ただし、その開発や導入スピードは他国と比べてゆっくりとしたものになりそうです。
そもそも、日本周辺の有事は必然的に「海・空」を巡る戦いになるため、ウクライナほどの活躍は期待できません。
地対空ミサイルがどちらの航空優勢も阻害しているロシア=ウクライナ戦争と違って、海・空戦では拮抗状態が起きづらいとされています。
ゆえに、小型ドローンが使えるのは島嶼地上戦を除いてあまり存在せず、広大な海洋という地理的特性を考えれば、航続距離で勝る航空機や大型ドローン、無人水上艇・無人潜水艇の方が活躍しやすいでしょう。
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