瓦礫撤去から地雷敷設まで
軍隊というのは、全て自前でまかなう「自己完結型」の組織ですが、これは自衛隊にもあてはまります。
自衛隊、とりわけ陸上自衛隊は食糧や水、燃料はもちろんのこと、道路などのインフラ整備まで自分たちで行えるため、災害派遣などではこの特殊能力が重宝されてきました。
そして、その自己完結能力を支えるのが施設科、いわゆる「工兵」と呼ばれる専門部隊ですが、ここではあらゆる土木建設機械がそろっています。
そのなかで、今回は「道路障害作業車」というのを紹介します。
- 基本性能:道路障害作業車
重 量 | 約11t |
全 長 | 7.9m |
全 幅 | 2.5m |
全 高 | 3.2m |
速 度 | 時速90km |
92式地雷原処理車や橋をかける81式自走架柱橋と比べれば、残念ながら道路障害作業車はあまり知られていません。
しかし、それは瓦礫などの障害物を撤去するだけではなく、じつは反対の障害物設置まで行える便利ツールなのです。
この車両はよくある73式大型トラックをベースにしつつ、その荷台にはさまざまな工作機材を取り付けられるアームが搭載されています。
このアームは伸縮できるほか、先端部分は目的に応じて以下の6つから選べます。
- 掘削ドリル
- 吊下げクレーン
- チェーンソー
- コンクリートカッター
- タンパー(地面を叩いて固める)
- ブレーカー(岩石などを破砕)
まるで十徳ツールのような車両ですが、その用途は敵の進行を遅らせるべく、道路上に地雷などの障害物を敷くことです。そのため、クレーンで障害物を置いたり、掘削ドリルで開けた穴に対戦車地雷を埋設します。
進路上の障害物設置は古典的なれど、その効果は決してバカにできず、重機が発達した現代も厄介なのは変わりません。これはロシア=ウクライナ戦争でも改めて示されており、部隊移動に適した道が限られるなか、両軍は互いの障害物にかなり苦労してきました。
一方、味方の進軍時になれば、道路障害作業車は同じ機能を使って、今度は敵の残した障害物を撤去したり、味方が進みやすいように路面を固めるわけです。
「薬と毒は表裏一体」という言葉がありますが、道路障害作業車も使い方次第でどちらにもなるといえます。
演習場整備や災害派遣で活躍
さて、これら能力の活躍場所は戦時に限られておらず、普段から演習場の道路整備などにも使われてきました。
自然豊かな演習場では、少し放っておくだけで、すぐに路面状況が悪化したり、倒木や落石などの自然障害物が道を遮ります。こうした「環境整備」に加えて、看板・電柱などを立てるときにも道路障害作業車は便利です。
もちろん、その能力は災害に見舞われた被災地でも大いに役立ち、6つのツールを使えば、瓦礫などが散乱する道路を応急復旧させられます。
普段は目立たないながらも、なんでも屋として秘めるマルチ能力は決してあなどれません。
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