小型のステルス艦
スウェーデンといえば、NATO加盟まで長らく中立国だったものの、17〜18世紀前半は欧州屈指の大国でした。たとえば、スウェーデン海軍はロシアに敗れるまで、バルト海の覇者として君臨していました。
19世紀以降は武装中立に変わるも、それを維持する国防努力は怠らず、高性能な国産兵器を開発してきました。
ただし、現在の海軍は大規模な艦隊を持たず、沿岸防衛を目的とした戦力規模になりました。されど、小規模な戦力にもかかわらず、主力のコルベットはパンチ力を誇り、特に期待されているのが「ヴィスビュー級」です。
- 基本性能:「ヴィスビュー級」コルベット
| 排水量 | 640t |
| 全 長 | 72.7m |
| 全 幅 | 10.4m |
| 乗 員 | 42名 |
| 速 力 | 35ノット(時速65km) |
| 航続距離 | 4,600km |
| 兵 装 | 57mm速射砲×1 12.7mm機関銃×2 7.62mm機関銃×2 対艦ミサイル×8 400mm魚雷発射管×4 機雷、デコイなど |
| 建造費 | 約200億円 |
「ヴィスビュー級」はステルス優先の設計に基づき、1990年代に建造された小型コルベットですが、
仮想敵のロシアが戦力的に優位である以上、スウェーデン海軍はできるだけ戦力温存を図り、沿岸防衛に努めねばなりません。それゆえ、捕捉されないことに力を注ぎ、ステルス・コルベットを解として導き出しました。
電波を逸らすデザインに加えて、船体には炭素繊維強化プラスチック(FRP)を使い、電波吸収材も多用されています。また、新たに減揺装置を組み込み、排気を海水で一旦冷却するなど、思いつく限りの工夫を行いました。
その結果、レーダー反射断面積の縮小のみならず、排熱・磁気・雑音・航行時に生じる波を抑えました。
同じ規模の船と比較した場合、通常は50kmの距離で探知できるところ、「ヴィスビュー級」は約10kmまで探知できません(荒天時は8km)。レーダー上は映ってないにもかかわらず、自動識別信号は表示されている事態が起きるほどです。
ステルスすぎて探知できない?(出典:スウェーデン海軍)
そして、1,000トン未満の船体に8発の対艦ミサイルを積み、対潜水艦用の魚雷発射管を備えました。機雷戦にも対応するべく、無人潜水機と自走式の機雷処分弾薬を持ち、沿岸防衛をこなせるようになっています。
その代わり、対空戦闘用にはデコイと57mm砲しかなく、基本的には対艦攻撃に軸を置きながら、一定の対潜・対機雷能力を確保した感じです。
改修で2040年以降も運用
旧式のミサイル艇を更新するべく、本来は20隻を量産するつもりでした。
ところが、冷戦後に軍縮と予算削減が進むなか、1隻あたり200億円のコストが重くのしかかり、最終的には5隻まで減らされました。
しばらくは5隻で問題なかったものの、ロシア=ウクライナ戦争の発生、スウェーデンのNATO加盟にともない、海軍は戦力強化を余儀なくされます。
対艦ミサイルの発射(出典:スウェーデン海軍)
そのため、スウェーデンは新型コルベットを4隻追加するほか、「ヴィスビュー級」の近代化改修を決めました。
新たに対空ミサイルで防空能力を高めながら、能力向上型の対艦ミサイル・対潜魚雷を追加します。電子機器は最新型にアップグレードを行い、対ドローンなどの能力を引き上げるそうです。
近代化改修は2030年頃までに終わり、5隻のは計画当初の想定とは異なり、2040年以降も現役を続けます。


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