悪しき文化をなくす
こうした給料アップに加えて、職場環境の改善も欠かせません。
陸自でのセクハラ事案を受けて、ここ数年はセクハラ・パワハラ摘発が大きく進められていますが、セクハラはともかく、パラハラに関してはなかなか判断基準が難といえます。
事実上の軍隊である以上、厳しさがつきまとうのは仕方なく、このあたりは合理性と状況次第といったところでしょうか。
たとえば、銃口を間違って他人に向けたとき、それを強い口調で正すのはやむをえません。
こうした命にかかわるものは、厳しく教えた方が過ちを繰り返さずに済むほか、重武装の軍隊組織だからこそ、規律は重んじなければなりません。また、有事では理不尽の嵐に巻き込まれやすく、あらかじめストレス耐性を高めておく必要もあります。
一方、身体的懲罰は言うまでもなく、上下関係を悪用した行為は払しょくすべきです。
どこの組織も同じとはいえ、人間は権力を与えられると変わりやすく、軍隊社会ならばなおさらです。残念なことに、本筋とは関係ない指導を繰り返したり、階級章を利用して王様のようにふるまうケースも少なくありません。
つまるところ、その指導に合理性があるか、将来の成長や状況改善に役立つかどうかで判断が変わってきます。そして、合理的な理由をきちんと説明して、指導された本人にその意義を認識させるのも重要です。
生活環境の改善、制度の見直し
次に生活環境について。
最近はようやくトイレット・ペーパーの自費購入がなくなったり、古い生活隊舎の立て直しが進んでいますが、これらはとうの昔にやるべきことでした。
いつも争奪戦になる洗濯機の数を増やす、エアコン設備をきちんと整える、基地内の娯楽を充実させるなど、改善点はまだまだあります。
これは基地内に留まらず、演習で使う仮住まい(廠舎)も建て替えねばなりません。演習時の寝泊まりだけとはいえ、多くの廠舎は想像以上にボロく、もはや戦前のタコ部屋ようなありさまです。
マットは汚れがひどく、冬はすきま風が入り、夏は虫が大量発生するなど、余裕で刑務所以下のお粗末ぶりです。
足りない、壊れているでおなじみの洗濯機
とりわけ隊員から不評なのが「残留制度」です。
これは緊急時にすぐさま対応すべく、休日に一定数の隊員を基地内にとどめておくものです。たしかに、有事がいつ起きるかわからない以上、最低限の人数は残さねばなりません。
ところが、せっかくの休日で残るにもかかわらず、残留要員には手当すらなく、明らかに「損」した気分になります。
残留させるならば、少なくとも手当を出すか、基地内の娯楽を充実させるべきです。最近はスマホさえあれば楽しめるものの、管理側がそれに甘んじてはいけません。
大きな基地でも、娯楽室という名の小さい図書室に古いビデオや本・雑誌があるだけという場合も多いです。米軍レベルとまではいかずとも、基地待機を強制する限りは、そこで十分に楽しめる環境を整えるのが国の責任でしょう。
コンビニがある場所はまだ恵まれている
さらに問題なのが、この残留制度をきちんと説明されておらず、そのまま入隊してしまうケースです。
「週休2日」「休日は外で遊べる」というアピールを信じた結果、あとで「話が違う」と感じるわけです。
広報側としては、少しでも魅力を全面に押し出して、不都合な部分を隠したいのはわかります。
しかし、変に取りつくろっても、入隊後に「ダマされた」と失望させるだけです。それならば、最初から実態を伝えた方が離職防止につながりやすく、中・長期的には
入隊者を確保するは大事ですが、せっかくの隊員が早々退職しては意味がありません。
この残留制度は2024年から試行的になくすそうですが、これがどこまで即応体制に影響を与えて、最終的に廃止されるかどうかはまだ分かりません。
仮に廃止となっても、外出は30分圏内などに制限されたら、あまり意味がありませんが。
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