退役後は保管?ついに自衛隊が予備兵器を確保へ

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これまではスクラップ処分

予算的な制約、あるいは物品愛護の精神からか、自衛隊では装備品を長らく大切に扱い、用済みになったときも比較的良い状態にあることが多いです。

しかし、他国への譲渡や売却が禁じられていたため、その行き先はスクラップ処分、もしくは駐屯地・基地内での記念展示でした。

ほとんどがスクラップ処分となるなか、ロシア=ウクライナ戦争では「予備兵器」の重要性が浮上しており、まだ使える装備は保管しておくべきという声が高まりました。

特に戦車や装甲車、火砲のような兵器は、たとえ古くてもそれなりには役立ち、ウクライナのような消耗戦では欠かせません。

こうした事態を受けて、日本も予備兵器の確保に向けて動き、自衛隊の退役装備を一部保管することになりました。

まずは、約30両の74式戦車とともに、数両の90式戦車、約10両の多連装ロケット・システム(MLRS)を保管するつもりです。むろん、これは始まりにすぎず、最終的にはそれぞれ数個大隊分になると考えられます。

保管倉庫のイメージ(出典:大林組)

ただ、いきなり保管といっても、現在の自衛隊には専用施設やノウハウがなく、取り急ぎ倉庫を作らねばなりません。

一部兵器は精密機器も搭載している以上、その辺に置いて置くわけにはいかず、保管には温度・湿度の調節、定期的な整備が求められます。

したがって、高温多湿な日本の環境下で適切に保管すべく、まずは少数の車両を使ってノウハウ作りから始める形です。

その後、保管施設や技術の確立をもって、より本格的な予備兵器の確保に移るのでしょう。

結局は「無いよりはマシ」

では、これら旧式兵器は本当に役立つのか?

消耗戦となったロシア=ウクライナ戦争では、双方とも倉庫にあった旧式戦車・装甲車を使い、西側諸国も余剰兵器をウクライナに提供してきました。

ロシア軍は半世紀以上も前の戦車を引っ張り出すなど、なりふりかまわない状況ですが、それでも「無いよりはマシ」というのが実情です。

たしかに、旧式戦車や装甲車、火砲は最新兵器の前には劣勢を強いられます。

しかしながら、高性能・高額な現代兵器を大量にそろえられる国は少なく、これらを使いつぶしてもまだ侵略がつづく場合、残っている装備で抵抗するしかありません。

それでも、相手が歩兵ならば、旧式戦車でも脅威を与えられるうえ、火力支援には有効です。これはウクライナにおいて、レオパルト1戦車やT-62戦車がそれなりに活躍している事実からも分かります。

装甲車についても、むき出しの荷台などで身をさらすよりは、古くても装甲がある方がいいに決まっています。アメリカが供与したM113装甲兵員輸送車は、その典型例であって、破片や銃弾から守る最低限の役目は果たしてきました。

逆に精密な電子機器・システムがない分だけ、最新兵器と比べて電波妨害や劣悪な環境に強く、むしろ適任といえるケースもあります。

つまるところ、「無いよりマシ」というのが本質ですが、旧式兵器も状況と使う場面によっては役立ち、消耗戦ではその備蓄量が戦局を左右しかねません。

日本の場合はどうなる

ウクライナの例をふまえれば、74式戦車も状況次第では役立つほか、90式戦車とMLRSにいたっては全然活躍できるレベルです。

いくら74式戦車が古いといえども、防衛線の穴埋めや敵の弱点に対する攻撃、移動できる火砲としては使えるでしょう。そして、こうした予備戦力が控えているだけで、心理的影響はもちろんながら、作戦における柔軟性も広がります。

日本は海に囲まれている以上、ウクライナのような全面侵攻を受ける可能性は低いですが、現代戦の消耗ペースを考えれば、予備兵器を持っておくに越したことはありません。

そもそも、今までのように小火器を除いて、ほとんど予備兵器がないというのが「異常事態」でした。日本特有の事情があったにせよ、それは有事ではリスクでしかなく、弾薬不足と合わせて自衛隊の継戦能力を制限してきました。

それが現代戦争の実態を目の当たりにした結果、ようやく日本の認識も変わったといえます。

万が一、日本が侵略にさらされたあげく、多数の10式戦車や16式機動戦闘車を失えば、倉庫から74式戦車、90式戦車を引っ張り出すしかありません。

さらに言えば、台湾有事では日本も支援する立場になり、ロシア=ウクライナ戦争におけるポーランドのような立ち位置になります。台湾側が苦戦すれば、最低でも補給物資、あるいは武器支援を求められる可能性が高いです。

いずれにせよ、保管しておいた戦車や装甲車、火砲は継戦能力を支える重要ピースになります。

そのため、順次退役していく90式戦車、MLRSに加えて、FH70榴弾砲や73式装甲車、96式装輪装甲車なども保管リストに載せられるでしょう。

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