海上自衛隊の情報作戦集団は何をするのか?

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海自の情報戦を一元管理

近年は従来の陸海空に加えて、宇宙・サイバー・電磁波の新領域への対策が急務となり、自衛隊もそれに向けた新部隊を立ち上げてきました。

航空自衛隊の宇宙作戦群(宇宙作戦団に昇格予定)、陸上自衛隊の電子戦部隊が発足するなか、海上自衛隊もサイバー戦・電子戦能力を引き上げるべく、「情報作戦集団」を2025年までにつくります。

この海自部隊は艦艇などの実働戦力は持たず、地上でサイバー戦や電子戦に対処しながら、海自艦隊を後方支援するのが役割です。

ロシア=ウクライナ戦争でも見られたように、サイバー攻撃や情報戦は実際の戦闘前から始まり、部隊運用に欠かせない通信インフラを狙ったり、偽情報による欺瞞作戦が行われます。

特にSNSの普及にともない、最新情報が一般人まで届きやすくなり、AI技術の発展で精巧な偽情報まで作れるようになりました。その結果、誤まった情報もすぐに広まり、世論に左右されやすい民主主義国家に脅威を与えています。

たとえば、親露派アカウントを通して偽情報が出回り、ウクライナを軍事支援する西側諸国の社会を揺さぶってきました。これらアカウントはSNS空間で大量出現しており、その影響力はバカにはできません。もし放置すれば、徐々に浸透しながら害悪になるのは必定です。

これは対中国でも変わらず、むしろ中国の方が心理戦や世論戦、認知戦が得意といわれてきました。そのため、有事では日本側の混乱・不安をあおるべく、中国がサイバー攻撃、情報心理戦を仕掛けてくるでしょう。

このような攻撃のうち、海上作戦に関わる部分を情報作戦集団は担い、集めた情報を各部隊にすばやく提供します。そのなかには、通信ネットワークの保護や偽情報への対処も含まれており、艦隊の作戦行動に支障が出ないようにせねばなりません。

もちろん、こうした部隊は初めてではなく、自衛隊全体ではサイバー防衛隊、海自内でもすでに複数の情報部隊が活動中です。新設される情報作戦集団は、海自内の各部隊をまとめるもので、機能集約を通して効果的、統合的に対応しながら、海自艦隊に有利な環境を作り出します。

米海軍との連携強化も

さて、情報作戦集団はその活動内容から、海自の本拠地といえる横須賀基地ではなく、市ヶ谷の防衛省を拠点にします。市ヶ谷には情報本部や海上幕僚監部、先述のサイバー防衛隊があり、情報共有・連携しやすい利点が見込めるからです。

また、情報作戦集団のトップには海将を置きますが、これは他国海軍の中将にあたり、現在の階級では最高位になります(海上幕僚長は純粋な階級というよりは、最高位のポストに近い)。

海上自衛官4.4万人のうち、海将は20人もおらず、位置づけ的には護衛艦隊や潜水艦隊、航空部隊の指揮官と同等です。つまり、海自はそれだけ情報戦を重視しているといえます。

海自部隊でありながら艦艇や航空機はなく、人員も約2,000人の見通しですが、その目指す形は同盟国・アメリカの第10艦隊に近いかもしれません。

米海軍の第10艦隊は名前に「艦隊」こそ付いているものの、その実態はサイバー・電子戦を一元的に行う陸上部隊です。陸海空のうち、海自は特に米軍との関係が深く、情報作戦集団も第10艦隊を参考にしつつ、将来的な連携も視野に入れています。

空自の宇宙作戦群がアメリカ宇宙軍と協力するのと同じく、海自の情報作戦集団も米海軍・第10艦隊との連携を行い、日米一体化をさらに進めるはずです。

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