NGAD計画の正式承認
2025年3月、アメリカは新型戦闘機を「F-47」と名付けて、2030年代に配備すると発表しました。これはF-22戦闘機の後継にあたり、米空軍で「次世代航空支配戦闘機計画(NGAD)」と呼ばれていたものです。
計画自体は以前からあったものの、開発費用が予想以上にふくらみ、その行く末は危ぶまれていました。ところが、5年前から試験飛行に取り組み、すでに生産準備が進んでいると判明しました。
トランプ大統領が正式承認を行い、自分が第47代大統領である点にちなんで、「F-47」と命名されました。このあたりはプライドが高く、歴史に名を残したいトランプっぽさが出ています。
そんなF-47は圧倒的な性能で他国を寄せつけず、アメリカが引き続き空を支配するための戦闘機です。世界各国がステルス機を登場させるなか、それをはるかに上回る性能を持ち、まさに「バケモノ級」になると予想されます。
明らかなステルス・デザインに加えて、新たな特殊塗装で電波を吸収、表面温度を抑えながら、レーダーと赤外線探知を回避する形です。原理的には従来と変わらず、最新技術で効果を飛躍させたところ、既存レーダーにはまず映りません。
F-22やF-35戦闘機が「第5世代」であるのに対して、F-47は次の「第6世代」にあたり、これまでの概念を変えると期待されています。米空軍にとっては初の第6世代機になるため、それなりの試行錯誤はあれども、将来の優位性確保には欠かせません。
従来型をしのぐ性能
詳細は不明ですが、全体能力ではF-22とF-35をしのぎ、AIが操縦や戦闘をアシストしながら、新型エンジンでマッハ2.0以上を実現します。F-22も機動性が高いとはいえ、F-47はこれを超えるとともに、さらなる燃費改善で航続距離を延ばしました。
攻撃面では兵器搭載量の強化だけでなく、極超音速ミサイルとレーザー兵器に対応したほか、多数の無人機・僚機とリアルタイムで連携可能です。
F-47のイメージ(出典:アメリカ空軍)
この戦闘能力を支えるべく、量子暗号技術で高い通信能力を獲得しており、短時間で膨大な情報量を処理します。そして、最新のセンサー技術を使うことで、地上と海、宇宙などの複数の領域をまたがり、これらを融合しながら戦う仕組みです。
単独での戦闘力はもちろん、新型無人機の編隊を操るなど、チーム全体の頭脳としても働き、敵の防空網の圧迫・突破を狙います。その結果、新しい概念に基づぐ第6世代機として、F-22やF-35とは「ひと回り」も違うと強調されました。
ボーイングで大丈夫か
なにやら期待一色とはいえ、懸念材料がないわけではなく、そのひとつは開発元のボーイング社です。ボーイングといえば、世界屈指の航空機メーカーでありながら、近年は旅客機の事故問題を受けて、業績不振に苦しんできました。
次期戦闘機計画を任せれば、数十兆円規模の受注を見込めるうえ、全体的な技術力の維持につながります。アメリカはボーイング、ノースロップ・グラマン、ロッキード・マーチンなど、それぞれの定期的な受注を通して、軍需産業のバランスをとってきました。
たとえば、今回はボーイング社の出番ですが、あくまで空軍の戦闘機計画であって、別の場所では海軍の次世代機を巡り、ノースロップ・グラマンと競争している最中です。
発表されたF-47(出典:アメリカ空軍)
しかし、ボーイング社の問題体質、開発能力を考えれば、次世代機を任せる懸念は否めず、社運をかけた正念場ともいえます。ボーイングは「X-32(試作機)」をつくったにもかかわらず、競争でロッキードのF-35に敗れた過去を持ち、今回はリベンジを果たす絶好の機会です。
その見積もりによれば、F-47はF-22と比べて安く、配備数も多くなるそうですが、こういうのは予想通りには進まず、おそらく爆撃機並みの価格になるでしょう。
いずれにせよ、次世代の主力戦闘機を担う以上、その開発は失敗が許されません。コスト高騰や開発遅延に見舞われたり、当初より低性能に仕上がった場合、戦略的優位性に与える悪影響は計り知れず、中国との競争で劣後してしまいます。
コストを抑えるならば、共同開発という手段があるとはいえ、F-22ですら輸出しなかった点をふまえると、F-47はなおさら許可が降りないでしょう。トランプ自身は「劣化版」の輸出を示唆したものの、これはいつもの思いつきにすぎず、米議会が承認するはずがありません。
また、ヘグセス国防長官はF-47について、アメリカに圧倒的優位性をもたらすとともに、同盟国の防衛強化につながるとしましたが、トランプ政権で同盟体制が揺らぐなか、安心感を与えられるかの試金石になります。

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