超強力な電子レンジ?
ロシア=ウクライナ戦争における地上戦の結果、いまや自爆型を含むドローンが飛び交い、戦場では大きな脅威となりました。
ところが、このような光景を見越してか、アメリカでは対ドローン兵器を作るべく、2018年にエピロス社(Epirus)が発足しています。そして、2020年には「レオニダス」なるシステムが登場して、その試作品が2023年に米陸軍に納入されました。
ちなみに、レオニダスの名前は歴史に基づき、アレキサンドル大王の師匠だった人物に由来します。大王の家庭教師といえば、アリストテレスが思い浮かぶも、じつは最初の師匠はレオニダスでした。しかも、そのレオニダスはエピロス出身(現・イピロス)であり、開発元の社名にもつながっています。
そんなレオニダスはマイクロ波(電磁波)を放ち、一度の多くのドローンを無力化できるエネルギー指向兵器です。それは超強力な電子レンジに近く、高出力の電磁波攻撃を通して、ドローン内部の電子機器を壊します。
目標を絞ってピンポイントに狙えるほか、広範囲にわたって電磁波を放出すれば、大編隊による同時多数攻撃にも対処可能です。実際の試験において、複数機の編隊を撃破しており、60機以上の無力化に成功しました。
正式採用に向けて試験中
対ドローン戦では電波妨害、レーザー兵器も有効とはいえ、前者は無線を使わない自律型には効果が薄く、後者はひとつの目標にしか集中できません。
一方、レオニダスは相手の電子機器を焼き、連続攻撃もできることから、次々と迫る自爆ドローンには効果的です。加えて、レーザー兵器よりは消費電力が少なく、敵味方の識別能力を持つため、味方機を無力化することなく、敵のドローンだけを落とせます。
確実性や対処範囲、コストをふまえると、レオニダスのような兵器は使い勝手がよく、多層的な防空網の一部を担うべく、現場での実証試験が続いてきました。
装甲車にも搭載可能(出典:アメリカ陸軍)
初期型のレオニダスはトラック搭載型でしたが、現在はその1/3にまでサイズが収まり、ストライカー装甲車で運用可能になりました。また、海軍向けのバージョンもあって、実験では100mの距離で小型艇を行動不能にしています。
こうした小型版は出力では劣り、オリジナルより射程も短いものの、その代わり消費電力が少なく済み、近距離で使う分には能力的に十分です。
ウクライナの教訓を受けて、対ドローン兵器の開発が加速するなか、レオニダスもその例にもれず、より機動性と費用対効果を高めながら、米陸軍での正式採用が期待されています。

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