輸出できない?US-2救難飛行艇の性能と後継機

自衛隊
この記事は約4分で読めます。

あらゆる点で高性能

海上自衛隊は防衛任務に加えて、海での救助活動を行うべく、飛行艇を運用してきました。現在は「US-2」という飛行艇を使い、救難から急患搬送までするものの、本来は撃墜された味方搭乗員を救い、戦力の損失を防ぐのが役目です。

しかし、交戦区域での救助はリスクが高く、「戦闘救難捜索」は航空自衛隊の救難隊が担い、US-2は比較的安全な海域で活動します。

  • 基本性能:US-2救難飛行艇
全 長 33.3m
全 幅 33.2m
全 高 10m
速 度 時速580km
航続距離 約4,700km
高 度 約9,000m
乗 員 11名
波 高 3m
価 格 1機あたり約120億円

US-2は2007年から配備が始まり、新明和工業が開発しましたが、その前身の川西航空機といえば、旧海軍の「二式飛行艇(二式大艇)」を作った会社です。

それゆえ、US-2の外見は二式大艇に似ており、あの傑作機の再来といわれました。

旧海軍の二式大艇

そんなUS-2は海上救難用である以上、長大な航続距離のみならず、荒れた海面への着水能力が必須です。

この難しい条件をクリアするべく、US-2は約4,700キロの航続距離を誇り、給油せずとも最東端の南鳥島まで届き、実際に緊急搬送してきました。

そして、高さ3メートルの荒波であっても、そのまま問題なく着水できるため、台風の接近時などを除けば、日本周辺の海に降りられます。

他国の飛行艇と比べると、多くは波高1〜2メートルしか耐えられず、航続距離でもUS-2には勝てません。

この飛行能力を実現するにあたって、海面記録から波高を自動解析するほか、「フライ・バイ・ワイヤ」のシステムを組み込み、コンピュータ制御で操縦を補助します。

その結果、US-2は飛行時の安定性が高く、多少の荒れた天気でも問題なく進み、一刻を争う海難救助で活躍してきました。ちなみに、以前の飛行艇は与圧されておらず、低気圧帯は迂回する必要がありました。

さて、実際に救難案件が発生すると、まずは現場まで最短距離で飛び、赤外線装置で海面を捜索しながら、捕捉機能で要救助者の座標をとらえます。

捜索時は低空・低速飛行になるため、US-2は航空機にもかかわらず、時速90キロの超低速で飛行可能です。通常の飛行機では失速するところ、US-2の強力なエンジンは「遅さ」に強く、高度な飛行安定性とともに、捜索活動を支えています。

この低速飛行の副産物として、最短330メートルで海面に降り立ち、帰りは最短280メートルで離水するなど、驚異的な短距離離着水能力を獲得しました。

なお、基本的には海面する着水するものの、機体は格納式の車輪も備えており、通常の飛行場でもそのまま使えます。したがって、飛行場のない離島では海に降り、大きい島や本土の空港まで搬送できます。

輸出失敗とアメリカの注目

世界最高峰の飛行艇とはいえ、あまりに性能が高すぎるためか、US-2は運用・整備が難しく、他国には「オーバースペック」です。

たとえば、インド・タイ・インドネシアが関心を示すも、そこまで高性能な機体は求めておらず、結果的に輸出案はなくなりました。

さらに、1機あたり100億円以上の価格になり、海自ですら7機しか保有していません。

ある部分に特化した性能を考えると、それは量産に適した工業品ではなく、職人技による工芸品に近く、コスト面では不利なりました。

一般的に飛行艇の需要は少なく、民間市場と輸出でコストを減らそうにも、そもそも販売には限界があります。その必要性は健在といえども、これ以上の需要と生産は見込めず、後継の構想も出ていません。

このような問題に直面するなか、アメリカの有力シンクタンクの目に止まり、台湾有事での有効性を指摘しました。台湾有事のシナリオをふまえると、米海軍の海上救難体制は不備が多く、US-2はその弱点を補えると提案しています。

有事のシミュレーションにおいて、アメリカは多くの艦船・航空機を失い、海上を漂流する味方を助けるにも、肝心の救難機が足りていません。そこで、US-2に白羽の矢が立ち、救難機不足を補完できるわけです。

自衛隊が誇る「救難隊」の本当の任務とは?
本来は味方搭乗員の救出 自衛隊の「救難隊」といえば、いつも災害派遣で活躍しますが、これは本来の任務でありません。本当は災害派遣ではなく、味...

コメント