72時間以内に出動
船体の可愛らしいイラストとは対照的に、戦車などを運ぶ特設輸送船となった「ナッチャンWorld」は、有事では防衛省との契約に基づいて、72時間以内での対応が求められます。
この「有事」には災害派遣も含まれますが、本当の狙いは南西方面の離島防衛です。
離島防衛を想定して輸送力強化を急ぐなか、人員・装備の長距離輸送ができる高速フェリーは、防衛省にとってはまさに打ってつけの存在です。
海自の「おおすみ型」輸送艦と比べても、「ナッチャンWorld」の搭載能力は申し分なく、むしろ速力では圧倒的に勝ります。ゆえに、緊急展開が求められた場合には優先投入されるかもしれません。
一方、平時においては、定期演習時の部隊輸送以外にはあまり需要がなく、観光船や広い船内を活用したイベント会場として貸し出されています。
かつて就航していた青森や函館のイベントで主に利用されていますが、緊急時にはこれらを中断して自衛隊輸送を優先せねばならず、2019年には台風発生にともなう災害派遣要請を受けて、アニメイベントが急きょ中止されました。こうしたリスクを考えると、企画側にとっては他の船舶より使いづらいのが本音でしょう。
PFI体制のさらなる強化
現状では「ナッチャンWorld」「はくおう」の2隻に頼るなか、老朽化するこれらのを置き換えるべく、防衛省は新たに2隻と契約を交わします。
さらに、車両やコンテナを多く運べる別の6隻とも契約を結び、新たに発足する「海上輸送群」と合わせて、自衛隊全体の輸送力を急拡大する意向です。
計画どおりに進めば、2027年までにPFI船舶は8隻になり、海上輸送群の中型輸送艦×1隻、小型輸送艇×1隻、機動舟艇×1隻とともに、離島防衛に向けた海上輸送体制を大きく強化します。
強襲揚陸艦?海上自衛隊の「おおすみ型」輸送艦について
実態はドック型輸送揚陸艦
離島防衛の要として日本版海兵隊・水陸機動団が発足したなか、いま懸念されているのが海上輸送力の不足になります。
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