米豪が導入する一方、日本は中止に
LRASMは航空機と艦船の両方で運用しますが、どちらの場合でも発射後は中高度をしばらく飛行した後、海面スレスレの低空飛行に移って探知を避けます。
航空機ではB-1爆撃機や空母艦載型のF/A-18戦闘機、F-35ステルス戦闘機などに搭載されますが、空中発射の方が距離を稼げるので射程面では有利といえます。
一方、艦船の場合は海上自衛隊の護衛艦にも装備されているミサイルの垂直発射基(VLS)で運用可能であり、開発元のロッキード・マーチン社は潜水艦搭載型も検討しているそうです。
ちなみに、LRASMは米海軍が運用中であるものの、ライバルとしてノルウェー産のNSMミサイルが存在するため、ハープーンの後継として安泰とまではいえません。
同じくステルスかつ長射程のNSMは既に沿海域戦闘艦(LCS)の対艦攻撃兵器として採用されており、次期フリゲート艦のコンステレーション級にも搭載されます。
したがって、今後も両者はトマホークのアップグレード版も交えながら激しい受注競争を繰り広げるでしょう。
世界に目を向けてみると、LRASMはアメリカ以外ではオーストラリアも導入を決めており、日本も一時期は導入に向けて本格検討していました。
日本の場合は近代化改修した航空自衛隊のF-15戦闘機で運用することを模索しましたが、機体改修にかかるコスト見積りが当初の3,000億円から5,500億円に高騰したことから導入を中止しました。
莫大な費用をかけてまで無理にLRASMを買わずとも、今後開発される12式地対艦ミサイルの能力向上型で代用できると考えた結果でしょう。ただし、同じくF-15向けに検討していた対地ミサイルのJASSM-ERは予定通り購入します。
台湾有事における本命兵器?
このように日本が導入を断念したLRASMですが、実は台湾有事では中国海軍を撃破するための切り札として期待されている兵器でもあります。
アメリカの有力シンクタンクCSISが出した台湾有事のシミュレーションでは、スタンドオフ攻撃能力を有するLRASMが防空能力を高めた中国軍とその兵站支援能力を壊滅させるうえで欠かせないと分析しました。
具体的には、24発もLRASMを搭載できるB-1爆撃機を安全なアメリカ本土から出撃させて中国海軍に対して長距離攻撃を行うというものですが、残念ながらLRASMは生産数が少なく、シナリオでも数が足りないとされています。
そのため、配備数こそ多いものの、本来は対地攻撃に用いられるJASSM-ERを対艦攻撃にも投入する可能性が探られました。
実際のところJASSM-ERが対艦攻撃能力を持つのかどうかは不明なので、同シナリオが描く将来を見据えてLRASMの生産を早急に強化すべきでしょう。
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