日本産のジェット機
航空自衛隊のパイロットはみんな最初にプロペラ型の「T-7練習機」で操縦訓練を行い、卒業後はいよいよジェット練習機に移ります。
なかでも、戦闘機パイロットを目指す者の多くが「T-4」という中等練習機を経験します。これはエンジンも含めて純国産のジェット機で、あのブルーインパルスが使っていることでも有名です。
⚪︎基本性能:T-4練習機
全 長 | 13m |
全 幅 | 9.94m |
全 高 | 4.6m |
乗 員 | 2名 |
速 度 | マッハ0.9 (時速1,110km) |
航続距離 | 1,300km |
高 度 | 14,800m |
価 格 | 1機あたり約22.5億円 |
T-4練習機はその丸みを帯びた姿から「ドルフィン」の愛称を持ち、川崎重工業が主体となって1980年代に開発されました。自衛隊向けの国産品としては珍しく開発費用と量産コストが抑えられ、計212機が生産されました。
練習機という関係から、操縦性や安定性を重視した設計になっており、特に「遷音速」と呼ばれる音速と亜音速が混在する難しいゾーンでも良好な操縦性能を発揮できます。
さらに、遠方の訓練空域まで出向くのを想定して、航続距離と速度はそれまでの練習機と比べて向上しました。
現在、T-4練習機はパイロットの卵たちが基本操縦課程、そして戦闘機操縦基礎課程という教育コースで乗る機体として、芦屋基地と浜松基地に多数配備されています。
こうした課程教育を通じてジェット機の操縦技術を獲得するわけですが、最終的に目指すF-15J戦闘機やF-2戦闘機とは操縦性のギャップが大きく、操縦しやすいT-4に慣れすぎたら戦闘機に移行しづらいそうです。
あくまで練習機であるT-4には武装がなく、川崎重工では電子機器の強化、機関砲やミサイルの搭載を含めた武装タイプが検討されたものの、実現にはいたりませんでした。
また、練習以外では整備員の教育や基地間連絡、集塵ポッドを取り付けて大気中のチリを採取する任務(北朝鮮の核実験時など)にも使われています。
ただ、やはり1番よく知られているのはブルーインパルスによる曲芸飛行であって、1995年から「戦技研究仕様機」という名称で使われてきました。
こうした機体は派手な塗装に加えて、低高度警報装置やスモーク発生装置、コックピット内のレイアウトなどの変更点があります。
一般の方は「T-4練習機」と聞いてもあまりピンときませんが、ブルーインパルスが乗る飛行機と説明すれば、イメージしやすいでしょう。
後継は日米共同開発へ
訓練以外でもいろいろ使われているT-4練習機ですが、残念ながら生産ラインはすでに閉鎖されているので、いま飛んでいる機体が最後になります。
後継については、防衛装備庁は2021年に「T-7およびT-4の後継機」に向けた情報収集を始めたものの、最終的にはアメリカと共同開発することになりました。
米空軍が使う「T-7A練習機」も候補として上がっていたなか、練習機としては初めての日米共同開発になった形です。
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