戦後初の独自設計
イタリア戦車といえば、第二次世界大戦の印象から「弱小」と思われがちですが、現在は戦後初めて本格開発した国産戦車の「アリエテ」を使っています。
ドイツのレオパルト2戦車などと比べた場合、やや地味で印象が薄いものの、このイタリア産戦車はどのようなものなのか?
- 基本性能:C-1 アリエテ戦車
重 量 | 54t |
全 長 | 9.52m |
全 幅 | 3.61m |
全 高 | 2.45m |
乗 員 | 4名 |
速 度 | 時速65km |
行動距離 | 約600km |
兵 装 | 120mm滑腔砲×1 7.62mm機関銃×2 |
価 格 | 1両あたり約6億円 |
イタリアは戦前から戦車開発をしてきたとはいえ、当時の工業力では強力な戦車を作れず、日本戦車とともに「弱い」イメージが定着してしまい、戦後はアメリカやドイツ製を運用してきました。
その後、旧式戦車を置き換えるべく、始めはレオパルト2の導入を目指しますが、国産開発派の圧力を受けた結果、1980年代に戦後初めて「アリエテ」を独自設計しました。
アリエテは日本の90式戦車と同じく、第3世代主力戦車に分類されますが、戦車開発で世界各国と肩を並べた点でも、その存在意義は90式戦車と似ています。
まず、外見は溶接加工による四角い形状が目立ち、敵の砲弾を逸らすべく、砲塔前部には避弾経始の傾斜があります。
独自開発の複合装甲を持ち、捕捉時の警報装置やNBC兵器(生物・化学・核物質)に対する防護力も備えました。それゆえ、防御力でいえば、当時のレオパルト2に引けを取らないレベルでした。

一方、攻撃面では西側標準の120mm滑腔砲を持ち、全てのNATO弾に対応するとともに、国産の射撃管制装置と安定装置により、走行しながらの精密射撃を実現しました。
その結果、攻撃・防御の両面で当時の西側戦車に追いつき、それまで引きずっていたイタリア戦車の評価を覆しました。しかし、国産エンジンはパワー不足が否めず、機動力では劣ると言われています。
「C-2」への改修
イタリアにとっては久々の国産戦車になり、1995年から計200両が生産されたとはいえ、冷戦終結と予算削減で本来の300両体制は達成できず、発展改良型の開発も中止されました。
いまは後継がないまま主力戦車を務めており、新しい第4世代戦車が続々と登場するなか、その性能不足は否めません。とりわけ生存性に対する懸念が強く、一部では「NATO最弱の戦車」と不安視されています。
そんななか、ロシア=ウクライナ戦争が始まり、NATO加盟国として軍備強化が急務になったため、イタリアは戦車定数を200両から250両に増強しました。
この計画を早期実現すべく、まずは125両のアリエテ戦車に近代化改修を行い、エンジン出力と装甲の強化、新しい射撃管制システムで「C-2アリエテ」にアップグレードします。
さはさりながら、近代化改修だけでは能力不足は抜本的に解決できず、イタリアの厳しい財政事情を考えれば、いまからの新規開発は無理でしょう。そこで、残りの125両についてはドイツの「レオパルト2A8」を購入します。
すなわち、「C-2アリエテ戦車」「レオパルト2A8戦車」が各125両になり、両者の性能と互換性をふまえると、前者は軍事侵攻の可能性が低いイタリア本土を守り、後者はNATO派遣部隊などに配備する形です。
こうした改修で2035年まで運用するとはいえ、「その後」はレオパルト2シリーズの追加購入、またはドイツの新型戦車「KF51 パンター」が有力視されています。

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