電磁力で発射する次世代砲
「レールガン」はSF世界によく登場しますが、それは決して空想兵器ではなく、実際に各国が研究・開発を進めています。簡単に説明すると、レールガンとは火薬ではなく、電磁力(電気エネルギー)で弾丸を放ち、超強力な威力を誇る「砲」です。
その速度や射程距離、破壊力は従来型を大きく上回り、1発あたりのコストも安いほか、電流の強弱で威力も調整できます。その代わり、電力消費量の多さからエネルギー供給が難しく、異常加熱による砲身摩耗が課題です。
それゆえ、昔から構想はあったにもかかわらず、技術的な課題をクリアできず、最近まで実現性が乏しい兵器でした。
米中、日本が実用化に動く
こうしたなか、研究開発ではアメリカが先行して進み、一時はズムウォルト級駆逐艦の主砲に使う構想もありました。また、中国もレールガン研究に取り組み、すでに艦船への搭載・発射試験を終えたとされています。
一方、日本でも防衛装備庁が中心になり、2020年7月には青森県・下北試験場で発射実験を行いました。
その後、2023年10月には洋上射撃試験を行い、その様子を防衛装備庁が公開しています。このとき、海上自衛隊が公表した写真から、試験艦「あすか」への搭載が判明しました。
洋上射撃は中国が先とされるも、実際は何も公表されておらず、正式発表という意味では日本が「世界初」になりました。むろん、次世代兵器は秘匿性が高く、そう易々とは公表しませんが、同時に開発競争や宣伝戦でもある以上、先にアピールした者勝ちです。
では、日本のレールガンはどのようなものなのか?
まず、砲自体は全長6m、重さ8トンとされていたものの、最新動画では砲身が短くなり、全体的な軽量化が図られました。砲身の摩耗問題も材質の変更、負荷のピークを抑える分割放電方式により、一定のメドが立ったと思われます。
レールガンは40mm口径を持ち、長さ約1.6cm、重さ約320gの弾丸を放ちますが、小さな弾丸は探知や迎撃が難しく、大きな運動エネルギーで多大なダメージを与えます。
洋上試験で使われた最新レールガンの様子(出典:海上自衛隊)
性能的には「2,000m/s」を超える弾丸初速を目指しており、実際の試験では2,297m/s(マッハ6以上)という数値を出しました。初速が1,750m/sの戦車砲と比べると、その威力の高さが分かるでしょう。
最大射程は200kmと推測されるなか、小型弾丸を高速で発射しながら、長距離の対空・対水上戦闘のみならず、極超音速ミサイルの迎撃すら想定しています。
迎撃ミサイルより費用対効果が圧倒的に高く、対水上戦闘では「超水平線射撃」を使って、いきなり探知範囲外から相手を撃ち抜くそうです。誘導・制御面の課題をクリアすれば、迎撃不可能な高速弾を重要箇所にたたき込み、遠くの水上艦をピンポイント攻撃できます。
まだ試作段階とはいえ、すでに射撃試験という地点までいたり、少なくとも夢物語ではなくなりました。これは研究開発で先行していながら、いきなり大型の5インチ砲級に取り組み、計画が失敗したアメリカとは対照的です。
「あすか」に載せたレールガン(出典:海上自衛隊)
日本は小型・小口径から着手したところ、洋上射撃試験を実現したのみならず、ドローンからミサイルにまで使えるなど、汎用性の高さも期待されています。
あとは電力の安定供給が課題ですが、洋上試験まで実施している以上、それなりの見込みはあるはずです。防衛装備庁での研究は今後も続き、試験艦「あすか」で運用試験を行いながら、最終的には実用化する方針です。

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