同盟復活?日本・イギリスが進める準同盟関係の未来

外国
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安保協力の本格化

日本がアメリカとの同盟強化を進めるなか、近年は「準同盟関係」ともいえる国も増えていて、その筆頭がオーストラリアとイギリスです。

今回は後者を解説するものですが、オーストラリアとの準同盟については以前の記事を読んでいただければと思います。

日本とオーストラリアが準同盟関係になったわけ
根深かった対日警戒感 日本は同盟国・アメリカのほかにも、イギリスやオーストラリアとの準同盟化を進めていますが、特に後者との相思相愛ぶりは近年の日本外交...

さて、歴史の授業でも習ったように、日英両国はかつては同盟関係にありました。その後、太平洋戦争で敵同士になったものの、日英同盟終了からちょうど100年が経った現在、再び似た関係になろうとしています。

たとえば、日英両国は食糧・弾薬、軍事施設などを融通し合う「物品役務相互提供協定(ACSA)」、共同訓練時の諸手続きを簡素化する「円滑化協定(RAA)」を締結済みです。

そして、イタリアを加えた3カ国による次期ステルス戦闘機の共同開発にも合意しました。

すでに自衛隊はイギリスの陸海空軍との共同訓練を毎年のように行っており、2021年にはイギリスの空母艦隊が日本までやってきました。この空母派遣は2025年にも予定されているほか、今後は定期イベントになる見込みです。

イギリス部隊の訪日が常態化するなか、このまま関係深化が続けば、将来的には戦闘機や艦艇などの一時配備すらありえます。すでにシンガポールにイギリスの哨戒艦が配備されていますが、いずれ日本でも似た光景が見られるかもしれません。

少なくとも、イギリス軍の来日と自衛隊との共同訓練はもはや新しい日常となり、日本はイギリスが極東で活動するうえでの事実上の拠点になりつつあります。

※現行のままでも、朝鮮国連軍の地位協定を適用すれば、イギリスは一部の在日米軍基地を使用可能。

英に期待すべきこと

対中国を考えれば、イギリスのアジア太平洋への関与政策はありがたいものの、果たしてどこまで期待できるかは未知数です。

第二次大戦後の帝国瓦解、そして冷戦終結にともなう軍縮でイギリスの軍事力・外交力がおよぶ範囲は小さくなりました。

自慢のロイヤル・ネイビーも空母や強襲揚陸艦を持つ外洋海軍(ブルーウォータ・ネイビー)とはいえ、組織規模と艦艇数だけでいえば海自の方が上回っている状況です。

しかも、英海軍は予算不足と低い稼働率にいつも悩まされており、アジアへの空母派遣もかなり無理をしました。こうした実態といまの国力を考えれば、有事ではプレゼンスを示すための小規模派兵が限界と思われます。

いくらかの航空機や艦艇は派遣できても、貴重な空母艦隊まで回せるかどうかは怪しく、メインの軍事支援は武器・弾薬、インテリジェンスの提供になるでしょう。

それでも、国連安保理の常任理事国であるイギリスが味方になる外交的意義は小さくありません。かつてほどの影響力はないとはいえ、少なくとも欧州勢の支援を取りつけるうえでは役立ちます。

すなわち、日本が期待すべきは本格参戦ではなく、いまだ軽視できないその影響力を日本有利に働かせることです。

日英艦隊による共同訓練(出典:海上自衛隊)

そもそも、イギリスのアジア太平洋への関心は歓迎すべきとはいえ、欧州方面をおろそかにしてまで出っ張ってくるのは好ましくありません。

むしろ、イギリスに望みたいのは、まずは自国を含むNATO軍の戦力強化を図り、対ロシアをしっかり機能させることです。ロシアが欧州方面に戦力を割けば、その分だけ極東方面が手薄にならざるをえず、日本の北方警戒における負担が軽減されます。

いまのロシアに対日侵攻の余力などありませんが、ロシアが対NATOに注力せねばならないほど、日本は対中国に専念しやすくなるのです。

したがって、イギリスを含むNATO諸国には「対ロシア」を任せつつ、日米同盟+豪州、韓国、フィリピンなどは「対中国・北朝鮮」に取り組むような役割分担が望ましいでしょう。

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