2つの船橋を持つ練習船
海の仕事は船に関する知識や技量が欠かせず、そうした組織は専用の練習船を持っているケースが多いです。これは海上保安庁も例外ではなく、海上自衛隊に練習艦があるのように、海保も独自の練習船を保有してきました。
そして、現在は5代目にあたる大型巡視船「いつくしま」がその役目を果たしています。
- 基本性能:巡視船「いつくしま」
排水量 | 5,500t |
全 長 | 134m |
全 幅 | 16.3m |
乗 員 | 実習生100名以上 |
速 力 | 20ノット以上(時速37km) |
兵 装 | 20mmバルカン砲×1 12.7mm機銃×1 |
搭載艇 | 全天候型救難艇×2 警備救難艇×4 |
建造費 | 約120億円 |
「いつくしま」は2024年に就役した大型巡視船であり、前の練習船「こじま」より2,000トン以上も大きくなりました。
中国の海洋進出を受けて、海保は2010年代から人員拡充を進めてきましたが、その一環として海上保安大学校の定員も増やしています。これにともなって、従来の練習船では対応できなくなり、新たに「いつくしま」が建造されました。
「いつくしま」では定員が60名から100名に増えたのみならず、より教育実習を意識した設計を取り入れました。
海保では初めて、操船用と実習用の2つの船橋が設けられており、どちらの計器を使っても船を動かせるうえ、両方を使えば同時に実習できます。
ほかにも、それぞれの分野に対応した演習区画があって、実際の現場における緊急対応など、以前より実践的な訓練が可能になりました。
出典:海上保安庁
また、3ヶ月以上の実習航海に対応すべく、船内の居住スペースは広めに作り、大人数での授業や寄港先でのレセプションを行う多目的室もあります。
一方、巡視船を兼務しているものの、後部甲板はヘリの運用は想定されておらず、この点は「こじま」に劣る形です。ただし、救難艇と警備救難艇は搭載しているため、これらを使った実践訓練は引きつづき可能です。
いずれにせよ、教育実習船としては優れた環境を持ち、今後の人材育成を支える重責を担います。海保は海自と同じく、深刻な人手不足に悩んでいますが、せっかく入ってきた若者を逃さないためにも、新しい装備と充実した教育環境は欠かせません。
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