1番艦はトラブルの連続
しかしながら、日本では独島級を「ポンコツ」呼ばわりするケースも多く、嫌韓感情が入っているにせよ、トラブルが続出したのは事実です。
たとえば、就役時のレーダーが甲板からの反射電波を捉えて、存在しない目標を映してしまう事象が起きました。飛行甲板のヘリが後部CIWSの射界に入り、射撃時の巻き添えを食らう可能性もありました。
さらに、機関部で火災が起きたり、浸水事故で発電機が故障するなど、何かとトラブルに悩まれてきました。その結果、2013年には一時的に航行不能に陥り、2015年にもスクリュー故障による修理を余儀なくされました。
ちなみに、これらは「独島」で発覚したため、前述のように2番艦は違う兵装を導入したわけです。
いまのところ、根本的解決にはいたっておらず、同じ独島級でありながら、1番艦と2番艦で差が生まれました。
F-35Bの搭載は非現実的
ところで、最近の強襲揚陸艦といえば、F-35B戦闘機の運用が流行っていますが、独島級の場合はどうなのか?
じつは飛行甲板はジェット機向けに耐熱対策がされています。もちろん、これはF-35Bを意識したものですが、全体的な長さは滑走・発艦には足りておらず、少なくともスキージャンプ台を設置せねばなりません。
そして、2つのエレベーターは埋込み式であり、前部のみが格納庫と飛行甲板をつないでいます(後部はウェルドックに接続)。仮にF-35Bを使うならば、機体がはみ出せるサイド・エレベーター(舷側・側面に設置)が必要です。
これらを考えると、F-35を使うには大きな改修工事が必要となり、あまり現実的ではありません。無理やり改修しても、せいぜい5〜6機しか載せられず、本来の水陸両用戦能力が削られます。
日本の「ひゅうが型」護衛艦と同じく、改修で得られるメリットが割に合わず、それならば軽空母を別で建造した方が合理的です。
そもそも、強襲揚陸艦いる?
そもそも、韓国に強襲揚陸艦は必要なのでしょうか。
主敵が陸続きの北朝鮮である以上、いわゆる「陸主海従」にならざるを得ず、海軍の役割は周辺海域の確保、陸軍に対する海上支援、北朝鮮への海上封鎖ぐらい。
必要に応じて、北朝鮮沿岸部への上陸作戦を行い、敵の後方を脅かすことも考えられます。朝鮮戦争でも、国連軍が何度か上陸作戦を実施しており、強襲揚陸艦は役立つはずです。
しかしながら、韓国は日本と同じく、アメリカとの同盟を前提にしています。米韓同盟内での役割分担、韓国自身の国力や予算を考慮すると、強襲揚陸艦の必要性は低く、駆逐艦や哨戒艦、掃海艇の整備が優先です。
結局のところ、建造理由に機動部隊や水陸両用作戦の指揮、航空作戦の遂行があったとはいえ、実際は外洋海軍に向けた野望もありました。
当然、そこには成長する国力を反映しつつ、隣国への対抗意識も込められていました。自国海軍の威容を示す「パレード艦」にはふさわしく、戦時や災害時にあれば便利なものの、米韓同盟が機能している限り、無理して持つ必要はありません。
2番艦の「馬羅島」(出典:アメリカ海軍)
一方、1番艦は潜在的な問題を抱えつつも、総合的には諸外国の強襲揚陸艦と大差なく、その役割を十分に果たせる能力はあります。
嫌韓感情からか、何かと韓国兵器を見くびる傾向があるなか、彼らの開発・製造能力はこの20年で大きく進化しました。
K2戦車やK9自走砲が売れているように、韓国製兵器は世界市場では高く評価されています。建造能力についても、いまや韓国は世界有数の造船大国になり、「独島」の建造時と同じではありません。
むしろ、「独島」で試行錯誤した結果、F-35も運用予定の「次」に反映されるはずです。
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