2000年代の無人偵察ヘリ
いまや小型民生ドローンを使った偵察が当たり前になりましたが、自衛隊が2000年代に導入した観測用の無人機は大がかりなものでした。
それが現在も使われている「遠隔操縦観測システム(FFOS)」、その改良型にあたる「無人偵察機システム(FFRS)」です。どちらもSUBARU(旧富士重工業)が開発したラジコン式の無人ヘリであり、その活動には支援車両が欠かせません。
※両方とも「遠隔操縦観測システム」とまとめて呼ぶケースが多く、ここでもそのように統一します。
- 基本性能:遠隔操縦観測システム(FFOS/FFRS)
FFOS | FFRS | |
重 量 | 213kg | 275kg |
全 長 | 5.3m | |
全 幅 | 1.2m | 1.3m |
速 度 | 時速135km | |
高 度 | 約2,500m | |
価 格 | 約45億円 |
遠隔操縦観測システムは偵察任務のみならず、もともとは特科部隊(砲兵)の弾着観測用につくられました。いまでこそGPS誘導砲弾などがありますが、火砲というのはいきなり命中弾を得るのは難しく、修正しながらその精度を高めていくものです。
しかし、敵に近づいたり、誤射を受けやすい弾着観測は危険度が高く、無人機に任せた方が安全です。だからこそ自衛隊は「FFOS」「FFRS」を導入したわけですが、これらは上空から弾着の様子を広く見渡せるほか、夜間や悪天候でも運用できます。
また、3時間以上の連続飛行時間と50km超の航続距離を持ち、多連装ロケットシステム「MLRS」のような長距離火砲にも対応しました。
では、「FFOS」「FFRS」は何が違うのか?
どちらも光学カメラと赤外線画像装置、敵による鹵獲を防ぐ自爆装置がある一方、GPS機能を持つ「FFRS」は離着陸を含めた完全自律飛行が可能です。また、「FFRS」では通信・航続距離が100km以上まで伸びたといわれています。
小型ドローンにはかなわない
航続距離では現代ドローンにも負けないものの、残念ながら遠隔操縦観測システムは使い勝手がよくありません。
なぜならば、30名以上の隊員に加えて、飛行管制や情報処理用の車両が6台も必要だからです。こうした大所帯ゆえに、移動展開・撤収に時間がかかり、敵に見つかりやすくなります。
ロシア=ウクライナ戦争でもわかるように、現代砲兵戦は「すばやさ」が生存性を分けやすく、偵察や弾着観測には小型ドローンの方が適任です。
しかも、現代戦争ではドローンが消耗品として年間1.5〜2万機も使われる事態になりました。こうした現状をふまえれば、安くて使いやすい小型民生品が主流になるのは仕方ありません。
もちろん、日本も手をこまねいているわけではなく、最近では陸自もスキャンイーグルという20時間以上も飛べる小型ドローンを導入しました。
これに対して、遠隔操縦観測システムは費用対効果が悪く、性能的にも中途半端になりました。今後も弾着観測に使うとはいえ、小型ドローンの配備が進むにつれて、この無人ヘリの出番は少なくなるだけでしょう。
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