「いずも型」護衛艦の空母化改造とそのF-35搭載数

いずも型護衛艦 自衛隊
この記事は約3分で読めます。

本来はいらない?

では、軽空母「いずも」「かが」はどのような役割を果たすのか?

その使い道はかつての護衛空母に近く、南西諸島方面に増援を送り込んだり、防衛上の空白地帯といえる大東諸島〜小笠原諸島の海・空域をカバーできます。

本来であれば、南西諸島やその他離島には基地を作り、それぞれに陸上・航空戦力を配備するのが理想的です。言うまでもなく、地上基地は船と違って沈まず、1発の被弾では戦闘不能にはなりません。

この利点は自衛隊も認識しており、ここ15年間で新しい基地を築きながら、対艦・対空ミサイル部隊を新設してきました。

一方、航空基地に限っていえば、南西諸島は空港こそ多いものの、戦闘機を使えるのが那覇と下地島ぐらいしかなく、実際に配備している那覇基地だけです。下地島空港は長い滑走路を持ち、理想的な位置にありながら、沖縄県との覚書などにより、軍事基地化はできません。

また、各島の空港設備を拡張したり、滑走路を延長すれば、航空戦力の展開先はかなり増えますが、これも地元の理解や協力が得られるとは思えません。

沖縄県での新基地建設は特に難しく、いま進めている陸自部隊の配備でさえ、多くの紆余曲折がありました。爆音を出す戦闘機の配備となれば、県を筆頭に地元の猛烈な反対運動が起こり、あまり進まないでしょう。

これらをふまえると、本当は南西諸島の「不沈空母化」が望ましいとはいえ、地元感情的にできないことから、「軽空母」の航空戦力でなんとか補うわけです。

逆にいえば、南西諸島に基地のネットワークを作り、この方面の航空戦力を増強できれば、あえて空母を持つ必要はなかったといえます。

練習空母、海軍外交の役目

一方、海自にとって悲願の初空母とはいえ、それは運用面では「初めて」の連続になります。

同じ航空機でも、ヘリと戦闘機ではその扱いが異なり、まずはクルーがどういう風に動くのか、その基本から学ばねばなりません。その後、時間をかけて習熟訓練を繰り返せば、ようやく戦闘機の安定・安全運用が可能となります。

よって、中国海軍の空母「遼寧」と同じく、次期空母に向けて経験を積む「練習空母」の意味合いもあるわけです。

「おおすみ型」輸送艦から着実に布石を打ち、ついに軽空母まで手に入れた海自ですが、その歩みをここで止めるとは思えず、「いずも型」で改善点を洗い出したあと、情勢に応じて「次」を検討するのではないでしょうか。

護衛艦「かが」とF-35B戦闘機「かが」でのF-35B(出典:海上自衛隊)

ただ、海自は深刻な人手不足に苦しみ、さらに本格的な空母を運用できるかは分かりません。予算はともかく、人員増加はこれからも見込めず、限られた資源を効果的に使うならば、潜水艦と多機能フリゲートにふりむけた方が賢明です。

いずれにせよ、当面は「いずも型」でノウハウを蓄積しながら、より本格的な空母については、人員・予算とのかね合いを塾考せねばなりません。

さらに、練習空母という役割以外にも、「いずも」「かが」は海自のシンボルでもあります。両艦を交互に南シナ海やインド洋に派遣したところ、日本のプレゼンスを示したり、国際親善を行う「海軍外交」も担ってきました。

これは改修後も変わらず、戦後初の日本空母が南シナ海などで共同訓練すれば、その歴史的意義と中国に与えるメッセージは計り知れません。

周辺地域に明確なシグナルを送り、日本のプレゼンスを示すという意味では、他の護衛艦にはできない役割を果たします。

空母化改修は無理?「ひゅうが型」護衛艦に求められる役割
海自初のヘリ空母 海上自衛隊にとって空母保有は長年の悲願でしたが、その実現に向けて大きな一歩となったのが護衛艦として初めて全通式甲板を持ち...

コメント

タイトルとURLをコピーしました