練習空母、海軍外交の役目
では、軽空母「いずも」「かが」はどのような役割を果たすのか?
その使い道はかつての護衛空母に近く、南西諸島方面に航空戦力を投入したり、防衛の空白地帯である大東諸島〜小笠原諸島の海・空域をカバーします。
一方、海自にとっては悲願の初空母とはいえ、それは運用面では「初めて」の連続になります。
同じ航空機でも、ヘリと戦闘機では全然その扱いが異なり、まずはクルーがどういう風に動くのか、そこから学ばねばなりません。その後、時間をかけて習熟訓練を繰り返せば、ようやく戦闘機の安定・安全運用ができます。
よって、中国海軍の空母「遼寧」と同じく、次期空母に向けて経験を積む「練習空母」の意味合いもあるわけです。
「おおすみ型」輸送艦から着々と布石を打ち、ついに軽空母まで手に入れた海自ですが、ここでその歩みを止めるとは思えず、「いずも型」で改善点を洗い出したあと、情勢に応じて次期空母を検討するのではないでしょうか。
「かが」でのF-35B(出典:海上自衛隊)
ただ、海自は深刻な人手不足に苦しみ、さらに本格的な空母を運用できるかは分かりません。予算はともかく、人員増加はこれからも見込めず、限られた資源を効果的に使うならば、潜水艦と多機能フリゲートにふりむけた方が賢明でしょう。
いずれにせよ、当面は「いずも型」でノウハウを蓄積しながら、より本格的な空母については、人員・予算とのかね合いを塾考せねばなりません。
さらに、練習空母という役割以外にも、「いずも」「かが」は海自のシンボルでもあります。両艦を交互に南シナ海やインド洋に派遣したところ、日本のプレゼンスを示したり、国際親善を行う「海軍外交」も担ってきました。
これは改修後も変わらず、戦後初の日本空母が南シナ海などで共同訓練すれば、その歴史的意義と中国に与えるメッセージは計り知れません。
周辺地域に明確なシグナルを送り、日本のプレゼンスを示すという意味では、他の護衛艦にはできない役割を果たします。
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