初の水陸両用部隊
中国軍の海洋進出を受けて、陸上自衛隊は南西諸島を防衛するべく、「水陸機動団」を2018年に創設しました。これは自衛隊初の水陸両用部隊であって、主力の2個連隊を長崎県・佐世保市に配備しました。
敵に占領された離島の奪還が仕事ですが、その源流は「西部方面普通科連隊(西普連)」までさかのぼり、約700名の精鋭が中核を担いました。
西普連は名前こそ「普通科(歩兵)」とはいえ、戦闘要員の半数以上が「レンジャー資格を持ち、西の守りを担うエリート部隊でした。
この精鋭部隊を下地にしながら、西普連を第1水陸機動連隊に改編したほか、新たに第2連隊をつくり、約3,000名の大所帯に増えます。その後、2024年には第3連隊を長崎県・大村市に置き、計3個連隊の編成になりました。
しかし、水陸両用作戦のノウハウがなく、ほぼゼロからのスタートであったゆえ、アメリカ海兵隊への派遣研修、共同訓練を通して戦力化を行いました。
水陸両用戦は通常よりも難易度が高く、水陸両用車両での強襲上陸、小型ボートによる潜入、ヘリからの降下など、あらゆるシナリオに対応せねばなりません。
訓練を行う水陸機動団(出典:陸上自衛隊)
したがって、「心・技・体」に優れた隊員が欠かせず、近年の水陸機動団は優先配置されています。いまや特殊作戦群と第1空挺団に次ぐ、陸自のエリート部隊として認識されており、隊員の半分以上がレンジャーであるほか、前身の西普連も潜入偵察・工作を行う特殊部隊に近い存在でした。
水陸機動団に配属された場合、5週間の基礎訓練(水陸両用基本課程)を行い、卒業後は「水陸両用徽章(きしょう)」を与えられます。
その後も潜入工作や潜水任務など、各専門に応じた教育訓練を受けたり、レンジャー未修得者は訓練に送られます。
高機動装備と人材確保
水陸機動団は装備も他部隊とは違い、米海兵隊も使う「AAV-7」(水陸両用車)が集中配備されました。
一方、揚陸に手間がかかる点をふまえて、戦車などの重装備は持っておらず、代わりに120mm重迫撃砲を使います。個人装備でも恵まれており、最新の20式小銃が優先配備されました。
また、空輸による機動展開をするべく、V-22オスプレイを近隣の佐賀空港に置き、海上自衛隊の輸送部隊とも連携するなど、他の陸自部隊とは違う性質を持っています。
こうした体制を整えるなか、水陸機動団ではノウハウの習得も進み、米海兵隊との共同訓練も定着してきました。
それでも、最大の課題は「人員確保」といわれています。
新設されたとはいえ、陸自全体の定員は増えておらず、よその隊員を配置転換するなど、既存の人的資源内でやり繰りしてきました。
そして、人員確保の一環として、「水陸両用手当(基本給の25%)」「特殊作戦隊員手当(43%)」をあてがい、特別部隊ならではのメリットを強調してきました。ただ、入団のハードルが高い分だけ、それに見合う人材を見つけるのも難しく、少子化が進むにつれて、人員確保はますます厳しくなるでしょう。

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