事故率は特段高くない
さて、ティルト・ローター機は複雑な構造を持ち、開発段階ではいろんな不具合が起こり、墜落事故が発生してきました。
ただし、このような不具合はオスプレイに限らず、航空機は開発段階は言うまでもなく、熟練度の低い初期配備期に事故が起きやすく、すでに構造的な欠陥は解消されています。
それでも、操縦の難易度は他の航空機より高く、在日米軍の墜落事故をふり返ると、それは配備してまもない頃、あるいは低習熟期に起きました。
また、事故数に目が行きがちですが、そもそもの配備数が多ければ、事故件数は比例して増えます。これは航空機に限った話ではなく、一般の自動車にも通じる話です。
オスプレイの生産数が400機以上にのぼるなか、統計的には重要なのは件数よりも「事故率」です。たとえば、重大事故の発生率に注目すると、10万飛行時間あたりの事故率は「3.27」です。これは海兵隊の全航空機の平均と大きく変わらず、その他の現代航空機と比べても、特に危険というわけではありません。
ところが、この事故率は「事故」の定義に加えて、どの種類のオスプレイを含めるかで変わります。同じオスプレイであっても、特殊部隊向けのCV-22は危険な任務に就き、危険度の高い飛行をすることから、事故率を押し上げてきました。
つまり、事故率そのものは「トリッキー」な数字になりやすく、着眼点や切り取り部分が変われば、危険度に対する印象も変わるといえます。
全体的な統計をみると、その事故率は突出して高いとはいえず、「欠陥」との指摘は正しくありません。本当にオスプレイが欠陥機ならば、アメリカ本土で使用禁止になっているはずです。
安全飛行で信頼回復するしかない(出典:陸上自衛隊)
さはさりながら、地元住民の立場からすると、墜落の危険性があるのは変わらず、ここは安全運用を積み重ねるとともに、理解促進のための努力が欠かせません。
特に沖縄配備を巡って世論が加熱していたとき、米軍でオスプレイの墜落事故を起きてしまい、その印象が余計に悪くなりました。
飛行機嫌いの人に統計的な安全性を説いても、恐怖が完全払拭できないのと同じく、統計的な数字だけで不安は解消できません。心情的な不安をやわらげるべく、米海兵隊と自衛隊が日々の運用を通して、確実な安全飛行を重ねるしかありません。

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