陸自の精鋭パラシュート部隊
陸上自衛隊には「精鋭部隊」がいくつか存在するなか、必ず有力候補に上がるのがパラシュート降下を行う「第1空挺団」です。
そもそも、空挺部隊というのは作戦初期において、空港などの重要拠点を強襲・確保する重責を担い、世界各国でもエリート扱いになります。これは自衛隊も例外ではなく、第1空挺団は全国から集められた選りすぐりの隊員たちで構成されています。
ちなみに、空挺部隊はパラシュート降下のイメージが強いものの、実際は作戦によって展開方法は変わり、ヘリを活用した「ヘリボーン作戦」も使われます。
たとえば、ロシア=ウクライナ戦争でもロシア軍の空挺部隊が首都近郊の空港を確保すべく、ヘリボーン強襲作戦を実施しました(失敗に終わったが)。
- 基本情報:陸上自衛隊 第1空挺団
人 員 | 約2,000名 |
創 設 | 1958年 |
司令部 | 千葉県・習志野駐屯地 |
担当範囲 | 日本全国(陸上総隊直轄) |
戦 力 | 3個普通科大隊 1個特科大隊 1個通信中隊 1個施設中隊 後方支援隊など |
第1空挺団は日本唯一のパラシュート専門部隊であって、その創設には旧陸軍の落下傘兵が中心的役割を果たしました。それゆえ、「空の神兵」といわれた陸軍空挺部隊の事実上の後継にあたります。
空挺団の標語である「精鋭無比」を実現すべく、陸自にいる16万人のうち、特に優秀な者だけを集めたエリート部隊です。特殊部隊である「特殊作戦群」、日本版海兵隊の「水陸機動団」が創設されるまで、陸自最強の名をほしいままにしてきました。
もちろん、現在も最強クラスなのは間違いなく、通常の普通科連隊と比べれば、特殊部隊に近いといえるでしょう。
そんな彼らの役割は敵の真ん中に降り立ち、そこに橋頭堡を築きながら、後続部隊を迎え入れることです。
輸送機から飛び降りる以上、通常隊員より高い技量・能力が求められるうえ、限られた装備品しか携行できず、軽装備・少人数で戦わなくてはいけません。
実際は個人携行武器に加えて、同じく投下される装甲車ぐらいしかなく、拠点確保と味方との連携ができなければ、いずれは孤立・全滅するだけです。
入隊条件とその訓練内容
このような特殊任務を戦うべく、第1空挺団では高い戦闘能力が欠かせず、誰でも空挺隊員になれるわけではありません。
当然ながら、選抜試験に合格せねばならず、まずは以下の条件をクリアせねば、「訓練生」にすらなれません。
年 齢 | 陸曹:36歳未満 陸士:28歳未満 |
体 格 | 身長161cm以上 体重49kg以上 胸囲78.5cm以上 |
体 力 | 自衛隊の体力検定5級以上 肺活量3,200cm3 握力30kg以上 水中での呼吸停止50秒以上 |
自衛隊の体力検定は7級まであるため、そこまで体力条件は厳しくなく、アスリートよりは低い難易度です。
さはさりながら、以上はあくまで身体的な条件であって、ほかにも知能や性格、適性検査をクリアせねばならず、狭き門なのは変わりません。
これら諸条件をクリアしたあと、まずは体力向上、着地姿勢の練習、高所からの飛び降り訓練をひたすら行います。
このとき、パラシュートの使い方を学びながら、ひたすら事前点検の重要性をたたき込まれます。というのも、ひとつでも装備品に不具合があれば、空挺降下では命取りになるからです。
降下の様子(出典:陸上自衛隊、筆者加工)
このような訓練で高さに慣れつつ、技量・意識ともに基礎を固めれば、いよいよ輸送機を使った「基本降下訓練」にステップアップです。そこでは最大80kgもの荷物を背負い、高度300m・時速200kmの輸送機から飛び降ります。
しかも、降下後の戦闘任務という想定があれば、そのまま装備を背負って歩き続ける「100km行軍」に突入するそうです(約3日間)。
これら訓練や試験をこなしてこそ、空挺隊員になれるわけですが、卒業後は空挺資格を意味しる徽章(バッジ)が与えられて、エリートの仲間入りを果たします。
最強の「心技体」と待遇
実戦では生存率の低い状況に飛び込み、他部隊にできないマネをすることから、空挺隊員は強靭な身体能力と優れた技量、折れないメンタルが要求されます。
ほとんどの隊員は「レンジャー資格」を持ち、私生活でもひたすら筋トレしたり、格闘技を行う者が多いそうです。このような精強さから、他からは畏怖の念を込めて「第1狂ってる団」と呼ぶとか。
降下する隊員たち(出典:陸上自衛隊)
一方、給料面では地域手当や空挺手当が加わり、通常の1.5倍にはなるといわれてきました。
まず、第1空挺団は物価の高い首都圏勤務にあたり、地域手当として基本給の12%が上乗せされます。そこに空挺手当(基本給の33%)が合わさるほか、パラシュート降下すれば、1回あたり約3,000〜7,000円(階級次第)が支給される形です。

コメント