いちばん厄介な存在
潜水艦は水上艦艇に大きな脅威を与えるも、空から広範囲を捜索する対潜哨戒機は苦手です。特定の相手に対して、それぞれの強みが優位に働き、たとえるならば、この三者はジャンケンに似た関係といえます。
そして、哨戒機にはP-1などの固定翼機があるなか、実際の潜水艦乗りからすると、同じ場所を飛び続ける哨戒ヘリの方が厄介だそうです。
そんな哨戒ヘリで最も有名なのが、アメリカの「SH-60 シーホーク」ですが、同シリーズは派生型と購入国が多く、日本でも長らく運用してきました
- 基本性能:SH-60J/K哨戒ヘリ
SH-60J | SH-60K | |
全 長 | 19.8m | |
全 高 | 5.2m | 5.4m |
乗 員 | 4名 | |
速 度 | 時速276km | 時速257km |
航続距離 | 約580km | 約900km |
兵 装 | 対潜短魚雷×2 7.62mm機関銃×1 |
対潜短魚雷×2 対潜爆弾×2 対艦ミサイル×4 7.62mm機関銃×1 |
価 格 | 約50億円 | 約70億円 |
SH-60h護衛艦で運用されており、海中捜索用ソナーに加えて、潜望鏡を探知するレーダー、わずかな磁気もとらえる磁気探知機を使い、潜水艦を発見・追跡するのが仕事です。
吊下げ式の簡易ソナーを海に垂らして、その周辺の音響情報を探り、もし発見できなければ、次の地点に移動しながら、同じ作業を繰り返します。
このように潜水艦の居場所を探し当てるわけですが、通常は複数の哨戒機と護衛艦でチームを組み、相手が逃げやすい点と線ではなく、いわゆる「面」で探すイメージです。
このとき、連携しながらの探知・追跡が欠かせず、SH-60ヘリは情報共有能力も重視してきました。
簡易ソナーを垂らすSH-60(出典:海上自衛隊)
ほかにも、「ソノブイ(使い捨てソナー)」を持ち、25個もバラ撒けるため、単独でもかなりの範囲をカバーできます。
そして、航空機ならではの高速機動力を活かせば、上空から俯瞰的に探せるほか、発見後は相手を逃がしません。だからこそ、哨戒ヘリは潜水艦にとって天敵になり、対潜の鬼を目指す海自には欠かせません。
SH-60Kへの進化
海自では1991年から配備が始まり、合計100機以上が調達されたため、P-3C哨戒機とともに対潜能力を支えてきました。
日本近海の潜水艦を捕捉・監視するのみならず、多用途に使えるヘリとして、人員輸送と海上救難、急患搬送でも活躍しています。
こうしたなか、現在は初期型の「SH-60J」に代わり、「SH-60K」への更新が進み、その能力をアップグレードしました。外見こそあまり変わらないものの、K型では以下のように改善されました。
- 軽量・高強度なメインローターの採用
- 新型ソナー、レーダーによる探知能力の強化
- 新しい情報処理システムによる効率化
- ミサイル警報装置、チャフ・フレア発射機の搭載
- 対潜爆弾・対艦ミサイルの搭載
まず、K型では従来より情報共有がスムーズになり、リアルタイムで連携しながら戦う「ネットワーク戦闘」に対応しました。
さらに、それまで使えなかった国産の97式短魚雷、最新の12式短魚雷、対潜爆弾、対艦ミサイルも搭載できるため、ヘリとしての攻撃力は格段に強化されています。
この改良をもってすれば、深海域に潜む敵には最新の短魚雷を使い、浅海域にいる場合は対潜爆弾で攻撃できる形です。
一方、対艦攻撃用の「ヘルファイアII」は一定の打撃力を誇り、状況次第では戦闘力を奪えるも、そもそもの射程が短く、元来は対戦車ミサイルである点をふまえると、敵艦艇の「撃沈」までは望めません。
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