化け物パイロットたち?飛行教導群のアグレッサーとは

航空自衛隊のF-15戦闘機 自衛隊
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最強の和製トップガン

航空自衛隊の花形は戦闘機部隊ですが、なかでも最強と称されているのが、他の部隊に対して指導を行い、訓練で敵役を務める「飛行教導群」、いわゆるアグレッサー部隊です。

アグレッサー(Aggressor)は攻撃する側、あるいは侵略者の意味を持ち、選りすぐりのパイロットが所属するなど、日本版の「トップガン」にあたる精強な部隊です。

現役の戦闘機乗りを教える以上、その飛行技術と判断力はレベル違いに高く、戦闘訓練で成長させるべく、強い敵役を演じなければなりません。

この難易度の高い役目を担い、稽古で胸を貸す立場になるため、アグレッサー部隊には相当の手練れ、バケモノ級のパイロットがそろい、空戦(ドッグファイト)の訓練ではほぼ負けなしです。

最前線の任務に就き、それなりの技量があるにもかかわらず、いざアグレッサー部隊に挑むと、明らかな差に度肝を抜かれるそうです。

こうした訓練は指導を兼ねており、アグレッサー部隊は全国を巡回しながら、1回あたり約2週間の出張訓練をするほか、逆に研修で飛行教導群にやってくるケースもあります。

航空自衛隊のF-15戦闘機アグレッサーの機体(出典:航空自衛隊)

そんな飛行教導群は小松基地(石川県)に拠点を置き、「敵に勝つには、まずは敵を知るべき」の哲学をふまえて、仮想敵国の戦術を研究・分析するとともに、それを再現してきました。

相手を知りつくせば、対処能力を磨けるわけですが、他国の戦術思想を理解・吸収するのは簡単ではありません。

それ相応の技量、柔軟性が求められるうえ、他部隊に「教える」立場である以上、敵の戦術を実演するだけではなく、その特徴や対応方法を論理的に指導せねばなりません。まさにスポーツ選手のコーチのような存在です。

厳しさと個性的な機体

少し飛行教導群の歴史をふりかえると、もともとは九州の新田原基地(宮崎県)にいたところ、2016年に小松基地に移転してきました。小松基地といえば、特に冬場は悪天候に悩み、お世辞にも気象条件はよくありません。

では、なぜ小松基地に移転したのか?

その理由は小松基地が日本海に面しており、そこに「G空域」という広い訓練空域があるから。時には音速で飛びながら、激しい機動飛行を行う以上、広大で安全な空域が欠かせず、日本海の「G空域」はそれに適していたわけです。

航空自衛隊の訓練空域の地図

現在、飛行教導群には約30人の精鋭が所属しており、空自の主力であるF-15J戦闘機を操りながら、事実上の教官として活動しています。

彼らは指導者としての厳しさを持たねばならず、フライト・スーツには「撃墜=死」を戒めるべく、ドクロマークのパッチが付けられるなど、勝利して生還するための過酷さを表しています。

それゆえ、訓練後には必ず反省会(デブリーフィング)開き、ここで怒声が飛び交うのは日常茶飯事だそうです。一般的には「ブラック」な印象を抱くものの、常に死と隣り合わせであることを考えると、妥協的な姿勢は許されず、厳しい雰囲気にならざるをえません。

一方、他部隊と同じF-15戦闘機とはいえ、飛行教導群の機体は派手な塗装を行い、ひと目で識別できるようにしています。

この個性的な塗装・デザインにより、海と空への同化を防ぎ、「敵機を認識できなかった」の言い訳を不可能にしました。つまり、訓練相手に必ず認識させながら、その対処を強いるのが目的です。

ちなみに、各デザインはパイロット自らが選び、ひとつとして同じものはありません。

入るにはオファー待ち

では、アグレッサー部隊はどうしたら入れるのか?

当然、空自で戦闘機パイロットになり、問題なく操るのが最低条件ですが、アグレッサー部隊はその特殊性から、自分で希望して入る部隊ではありません。訓練でアグレッサー部隊の目にとまる、あるいは日々の活躍ぶりが伝わり、向こうからスカウトされる形で異動します。

したがって、普段から飛行技術を磨き、アグレッサーの印象に残るべく、実力を発揮せねばなりません。

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