駆逐艦としては失敗作
ここまでの経緯を見ると、すばらしい高性能艦に思えますが、残念ながら「ズムウォルト級」の評価といえば、「カネだけかけた失敗作」という酷評ぶりです。
予算の削減とコスト超過にともない、たった3隻で打ち切られた末、ほぼ実験艦に終わったからです。
さらに、本来はVLS数が126個もあって、そこでは長射程のSM-2対空ミサイル、弾道ミサイルを撃墜可能な「SM-3ミサイル」を使うはずでした。
しかし、実際のVLS数は80個にとどまり、防空能力は射程50kmのESSMに抑えられました。
ズムウォルト級駆逐艦(出典:アメリカ海軍)
主砲はロケット補助推進のGPS誘導弾を使い、最大150km先まで届くべきところ、この案もコスト削減で中止になりました。
なお、電磁レールガンとその消費電力をふまえて、大出力の発電機を備えたものの、この開発計画も2021年に白紙化されます。こうした経緯をふまえると、失敗扱いは仕方ありません。
すなわち、いろいろ詰め込もうとするなか、結局は予算不足で全然うまくいかず、本来より性能が限られてしまいました。
今後は挽回できるか?
このまま失敗で終わるかと思いきや、極超音速ミサイルの「LRHW(ダーク・イーグル)」の搭載が決まり、現在は改修工事を受けています。
これは対中国の切り札のひとつですが、主砲を発射モジュールに換装したあと、12発の極超音速ミサイルを運用する予定です。
無事に工事が終われば、中途半端な超大型駆逐艦ではなく、その戦闘攻撃力が飛躍的に伸び、中国軍にとっては大きな脅威になるでしょう。
将来的な挽回が見込まれるとはいえ、現状では約5,000億円もの建造費に対して、能力的には釣り合っておらず、駆逐艦としての量産性どころか、使い勝手さえよくありません。
あまりに高価すぎるがゆえ、その損失を恐れて投入できないなど、むしろ負担になってきました。
数で勝る相手と戦う以上、「質」での対抗は間違ってないものの、質的優位で対抗できる「量」には限界があります。
現実では少数の高額・高性能兵器ではなく、普通の兵器を低コストで量産した方がよく、「ズムウォルト級」の反省と失敗を活かしてか、米海軍は「アーレイ・バーク級」イージス艦の改良型に移行しました。

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