実戦教訓を生かした改良型
さて、同時期に登場したことから、K9はよく日本の「99式自走砲」のライバルとして比較されがちです。
こうしたなか、一部では「欠陥」と見くびる向きがありますが、これは初実戦となった延坪島砲撃事件(2010年)において、5分間で4発しか放てなかったことに起因します。
このとき、直前まで射撃訓練をしていた関係で、事件発生時は弾薬が装填されておらず、初動対応が遅れました。しかも、北朝鮮側の奇襲砲撃で3両がいきなり損傷して、連動した電子戦攻撃で対砲兵レーダーも電源喪失、一時ダウンしました。
こうした不利な状況のなか、K9自走砲は乗員の死傷者を出さず、レーダー復旧後は損傷車両を含む全4両で反撃しています。奇襲攻撃を受けたり、観測部隊がいないにもかかわらず、反撃では相手陣地を脅かすほどの至近弾を与えたのも事実です。
このあたりを考慮せず、「欠陥品」として一括りにするのは正確ではありません。
K9自走砲は延坪島砲撃事件で「実戦」を経験したところ、その後は「K9A1」「K9A2」という改良型が登場しました。
まず、「K9A1」は2018年から配備が始まり、新たに補助動力装置やロケット補助推進弾(最大射程54km)を導入したり、暗視装置と射撃管制システムの性能をさらに高めました。
対する「K9A2」は、自動装填装置で発射速度を毎分9〜10発まで伸ばしつつ、乗員数は5名から3名まで省人化しました。ほかにも、砲身寿命の延伸や装甲強化、12.7mm機関銃の遠隔操作化、エアコンの追設が予定されています。
この「K9A2」は2027年に登場する見込みです、さらに先を見据えた「K9A3」の開発計画も発表されました。こちらは自動化を進めるとともに、滑空弾によって最大射程を100kmまで延伸予定です。
欠陥どころか、ベストセラーに
改良型が登場するなか、K9自走砲は海外でも高評価されており、同じ韓国製の「K2戦車」とともに目玉商品になりました。
すでにトルコ、エジプト、フィンランド、オーストラリアが採用したほか、最近ではポーランドが670両も注文して注目を浴びました。特に陸軍増強に走るポーランドが爆買いした意義は大きく、世界の50%以上がK9という驚異的なシェア率になります。
ベストセラー兵器の仲間入りを果たした背景には、価格と性能が釣り合っているのみならず、優れたカスタマーサポートがありました。韓国は売込み強化のために輸出先の要求に応じることが多く、独自改良や技術移転も融通が利きます。
技術の結晶ともいえる高性能兵器を購入するとき、普通は輸出元から制約を受けるところ、韓国はあまり口を出さず、柔軟な対応とアフターサービスの充実に努めてきました。
つまるところ、K9自走砲はスバ抜けて優秀ではないものの、数をそろえて使うには申し分なく、費用対効果で需要と供給を上手くマッチさせた形です。
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