世界初の実用イージス艦
イージス艦は弾道ミサイルの迎撃という印象が強く、特に日本ではそのイメージが浸透しています。しかし、本来は対艦ミサイルの飽和攻撃に対処すべく、高性能な艦隊防空艦として開発されました。
そして、世界で初めてイージス・システムを実用化したうえ、いまもアメリカ唯一の巡洋艦として使われているのが「タイコンデロガ級」です。
- 基本性能:タイコンデロガ級ミサイル巡洋艦
排水量 | 7,242t(基準) |
全 長 | 172.5 m |
全 幅 | 16.8 m |
乗 員 | 360名 |
速 力 | 30ノット(時速56km) |
航続距離 | 約11,000km |
兵 装 | 127mm速射砲×2 25mm機関砲×2 20mm CIWS×2 12.7mm機関銃×4 3連装短魚雷発射管×2 ハープーン対艦ミサイル×8 垂直発射装置(VLS)×122 |
価 格 | 1隻あたり約1,200億円 |
「タイコンデロガ級」は1983年に登場したあと、計27隻が建造されたミサイル巡洋艦ですが、その大きさを生かしたミサイル搭載数、ゆとりある拡張性、居住性のよさで知られてきました。
設計自体は古いとはいえ、イージス・システムは大きくアップグレードされており、最大16〜18個の目標を同時に対処できます。それゆえ、空母打撃群には防空指揮艦として配備されるほか、湾岸戦争やイラク戦争での実戦経験もあります。
「タイコンデロガ級」巡洋艦(出典:アメリカ海軍)
加えて、改修艦は「共同交戦能力(CEC)」を持ち、リアルタイムで情報共有しながら戦うなど、古い見た目とは異なる高性能な中身になりました。
一部は弾道ミサイルの迎撃能力もあって、2008年には制御不能の人工衛星を破壊すべく、SM-3迎撃ミサイルで撃墜しています。
すなわち、「タイコンデロガ級」は老兵といえども、アップグレードされた能力は決してあなどれず、特に防空能力は他国の新鋭艦にも見劣りません。
まもなく退役予定
性能こそ現代戦に通用するものの、高い維持費と耐用年数の限界を受けて、残っている13隻は2027年には引退します。
本来であれば、その後継には「CG(X)」という新しいミサイル巡洋艦が就く予定でした。ところが、この計画は廃案になってしまい、代わりに次世代イージス艦の計画(「DDG(X)」)が進められています。
「DDG(X)」はアーレイ・バーク級の後継にあたり、艦種的には駆逐艦に分類されますが、その船体規模はタイコンデロガ級と似た大きさです。それでも、2027年に米海軍から巡洋艦が消えるのは変わらず、ひとつの節目を迎えようとしています。

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