近距離対処用の対潜兵器
旧日本海軍は水雷戦を得意としたため、その駆逐艦や巡洋艦には伝家の宝刀である酸素魚雷を載せていました。しかし、第二次世界大戦以降はミサイルが取って代わり、いまや軍艦同士の水上戦闘で魚雷は使いません。
一方、近距離にいる潜水艦に対処すべく、いまも海上自衛隊の護衛艦には魚雷発射管が搭載されています。
- 基本性能:324mm3連装短魚雷発射管
重 量 | 約1.2t |
全 長 | 3.75m |
全 幅 | 0.99m |
旋回範囲 | 180度 |
「68式3連装短魚雷発射管」は国産の対潜兵器であって、近距離攻撃用の短魚雷、あるいは敵魚雷を騙すためのデコイ(囮魚雷)が装填されています。ちなみに、発射管の番号は右側にあるものが1・3・5番、左側が2・4・6番という順番です。
魚雷を射出する前部(左)とハンドル操作を行う後部(右)
圧縮空気で魚雷を押し出す仕組みですが、同じ68式でもハンドルで方位調整を行う人力旋回式と遠隔操作ができるタイプがあります。もちろん、遠隔操作式の方が使いやすく、「こんごう型」以降の護衛艦で採用されてきました。
用いる魚雷などの相違点はあるものの、発射管自体の性能はあまり変わらず、海自では最も古い装備のひとつです。
この魚雷発射管は艦中央部の通路脇にあることが多く、一般公開では間近で見れる貴重な兵器です。主砲やミサイル発射機と比べて目立たず、船の前後を行き来するときに素通りしがちですが、もし機会があれば足を止めてみて下さい。
「3つ」がちょうどいい?
ところで、なぜ「3連装」なのでしょうか?
2連装や4連装を使う国もあるなか、同盟国・アメリカなどの西側諸国は3連装を使うケースが多く、海自もこれに合わせた感があります。
そもそも、中・遠距離向けのアスロック対潜ミサイルとは異なり、短魚雷はとっさに対処しながら、即時反撃するのに適した兵器です。たとえ敵潜水艦の詳細位置が分からずとも、大まかな情報のみで発射できるため、魚雷攻撃を受けた水上艦はとりあえず短魚雷で応戦します。
敵潜水艦に心理的恐怖を与えながら、いちばん厄介な有線誘導を断念させたり、早く逃げるように仕向けるわけです。
ただし、短魚雷は追尾機能に優れている分、同時に複数を使えば、お互いに干渉してしまいます。そのため、通常は1本だけを放ち、マンガや映画のようにいきなり3〜4本を発射することはありません。
そうは言いつつも、再装填作業や所要時間を考えると、単装や2連装は実戦では心許なく、3連装あたりが運用上は好都合だったといえます。
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