基地警備の指導者
ロシア・ウクライナ戦争の最中、ウクライナは自爆ドローンを使いながら、ロシア空軍の基地を襲い、多数の爆撃機の破壊に成功しました。この奇襲作戦の衝撃は大きく、ドローンの有用性を示すとともに、基地警備の重要性を改めて痛感させました。
むろん、日本の航空自衛隊も他人事ではなく、各基地の警備強化を急ぎ、相応の能力を確保せねばなりません。各地に基地警備隊を置き、最低限の警備力はあるものの、以前の記事で解説したとおり、陸自と比べて装備面では著しく劣り、その訓練は十分とはいえません。

戦闘機がいる主要基地になれば、さすがに練度・装備はマシになるとはいえ、「僻地」の基地ともなれば、そもそもの人員が足りておらず、即席で編成した感が否めません。
こうしたなか、各地の警備隊を教育・指導するべく、基地警備のエキスパートがいます。それが「基地警備教導隊」というもので、茨城県の百里基地を拠点にしながら、全国の基地警備隊を訓練してきました。
- 基本情報:基地警備教導隊
| 創 設 | 2011年3月 |
| 拠 点 | 茨城県・百里基地 |
| 人 員 | 約40名 |
| 構 成 | 管理班、研究班、教導班 |
| 装 備 | 64式小銃、20式小銃、9mm拳銃、 5.56mm軽機関銃、対人空気銃、 軽装甲機動車、音響発生装置 ロボット警備犬 |
創設は2011年と意外に新しく、航空戦術教導団の直轄部隊にあたり、2等空佐(中佐)の指揮の下、約40名が所属する少数精鋭の部隊です。部隊管理の班を除くと、基地警備の研究を行う班、各地を巡回・指導する教導班から成り、後者が各基地の訓練相手を務めてきました。
「教導」といえば、戦闘機向けの飛行教導群(アグレッサー)、防空部隊用の高射教導群がありますが、それの基地警備版にあたります。
各基地とも立地・環境が違う以上、教導隊は基地ごとの特性を研究しながら、最も適切な警備訓練を行い、当事者の能力を底上げするのが役目です。いわゆる「地の利」を活かすべく、各地で研究・教育訓練に取り組み、それぞれの基地警備隊に稽古をつけます。
そして、ウクライナによる奇襲作戦など、基地警備に関わる事象が起きれば、それを研究して対策を練り、訓練内容に反映してきました。
なお、地上戦を行う関係から、陸上自衛隊との連携も欠かせず、中央即応連隊に隊員を派遣したり、アメリカ空軍とも共同訓練を重ねています。
装備は恵まれている?
基地警備は主に対テロ、対ゲリラ戦を想定しており、教導隊は通常の基地警備隊と違い、装備面では比較的恵まれています。
小さな分屯基地ではパジェロ、ランドクルーザーを青く塗り、防弾性能が皆無なのに対して、少なくとも教導隊は軽装甲機動車を使い、最近はロボット警備犬も導入しました。
そして、他の部隊が64式小銃を使うなか、教導隊では20式小銃の配備が始まり、5.56mm軽機関銃、音響発生装置(対人)を保有しています。
ロボット犬も配備中(出典:航空自衛隊)
訓練時間も他部隊よりは多く、口で「バンバン」言う一部の基地とは異なり、実弾射撃の機会でも優遇されています。このあたりは「教える立場」である以上、当然かもしれません。
その分、相応の素質・技量が必要になり、小銃の取り扱いから射撃の腕、近接戦闘における動きなど、職能的には陸上自衛官に近いです。さすがに陸自には敵わないとはいえ、航空自衛隊の中に限ると、地上戦の専門といえるでしょう。
実際のところ、有事で陸自が忙殺されている場合、空自の自前の特殊部隊として動き、重要な基地を守ったり、敵から奪還すると思われます(太刀打ちできるかどうかは別)。
したがって、誰でもなれるわけではなく、4.7万人の航空自衛官のうち、「警備・警務」の職種に就き、特に心・技・体で優れていなければなりません。


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