現代の騎兵？頼りになる陸自・偵察用オートバイ

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優れた機動力・汎用性

戦いには「戦場の霧」という言葉があります。

これは作戦計画を狂わせたり、戦局をしかねない不確定要素のことを指し、事前準備や想定を超えるものです。

こうした霧を少しでも晴らす努力が求められるなか、そのひとつが敵の戦力や状況をつかむ「偵察」であって、これを怠ったり、軽視したまま戦闘に突入すると痛い目に遭います。

当然ながら、陸上自衛隊も偵察を重要視してますが、とりわけ現場で重宝されているのが、高い機動力と汎用性を誇る「偵察用オートバイ」です。

偵察隊や普通科連隊に配備されている偵察用オートバイは、自衛隊が運用する車両のなかで最も小さく、UH-1ヘリやゴムボートにも載せられます。

見た目は他の自衛隊車両と同じオリーブドラブ（OD）色ですが、そもそも民間用バイクを自衛隊向けに改良しただけなので、性能自体は市販のものと大差ありません。大きな違いといえば、バンパーや無線機を積むラックが追加されているぐらいでしょう。

陸自ではホンダの「XLR250R」とカワサキの「KLX250」という2種類の偵察用オートバイを使っており、5代目にあたる後者は2000年頃から導入されました。

ちなみに、偵察用オートバイは4代目「XLR250R」までホンダ製が採用されてきましたが、5代目になってライバルのカワサキがようやく受注を獲得した形です。

偵察用オートバイに乗る隊員（出典：陸上自衛隊）

さて、性能については市販品と変わらないと説明しましたが、その使い方は大きく異なります。

まず、単車としての機動力を活かして敵状偵察を行うわけですが、87式偵察警戒車のような大型車両が進めない狭い道や起伏の激しい山中を走行できるほか、何からればすぐに離脱できるのが利点です。

また、通信状況が悪いときの伝令役や小規模な戦力展開にも利用しやすく、ある意味「何でも屋」としての使い勝手のよさを持っています。

大昔の騎兵が行っていた偵察や伝令任務をバイクが引き継いだわけですが、馬のように疲弊せず、より快速なバイクは「早さ」が重視される偵察任務に向いた装備といえます。

ただ、バイクの騒音は敵に察知されやすく、隠密偵察では小型ドローンを用いた方が確実かつ安全です。むろん、見つかる前提の威力偵察や途中までバイクで進み、残りは徒歩で移動する場合は別ですが。

ヘリから展開する偵察用オートバイ（出典：陸上自衛隊）

実際の任務では反撃するような状況も考えられ、89式小銃を携行した隊員はバイクを盾にしたり、手放しで運転しながら射撃せねばなりません。

駐屯地祭の訓練展示では、こうした立ち乗り射撃に加えて、ウィリーやジャンプのようなアクロバティックな技も披露して、過酷な地形を走破できる腕前を内外に証明しています。