対艦性能を高めた準国産機
航空自衛隊のF-2戦闘機は、アメリカのF-16戦闘機をベースに日米共同開発されたものですが、その設計・生産は三菱重工業が担当している準国産機でもあります。
同社は第二次世界大戦の傑作機・零式艦上戦闘機、いわゆる「零戦」の産みの親でもあるため、F-2は「平成の零戦」としても知られています。
主に対艦攻撃任務を担うことから、「支援戦闘機(戦闘攻撃機)」と長らく呼ばれていましたが、現在は正式名称が単なる戦闘機に変更されました。
- 基本性能:F-2戦闘機
全 長 | 15.5m |
全 幅 | 11.1m |
全 高 | 4.96m |
乗 員 | 1名 ※複座式のB型は2名 |
速 度 | マッハ2.0 (時速2,450km) |
航続距離 | 約2,900km |
高 度 | 約15,000m |
兵 装 | 20mm機関砲×1(固定) 対空ミサイル、対艦ミサイル 対地爆弾・ロケット弾 |
価 格 | 1機あたり約120億円 |
戦後初の国産戦闘機「F-1」の後継として開発されたF-2ですが、対艦攻撃能力を重視したところ、最大4発もの対艦ミサイルを搭載できる重武装ぶりとなりました。
島国・日本を守るには敵の水上部隊を撃破せねばならず、対艦ミサイルによる飽和攻撃を行えるF-2戦闘機は理想的な兵器です。
加えて、この「対艦番長」は高い運動性能のおかげで制空戦闘もできるため、防空用のF-15J戦闘機とともに日々のスクランブル任務にも就いています。
F-2の機体はベースとなったF-16より大きいものの、当時の最新技術であった炭素繊維材を使って重量を抑えており、電波吸収材によってステルス性も高めました。
また、三菱電機が開発した新型レーダー(AESA)は多目標を同時対処したり、低空目標を捉えることに重きを置いています。こちらは初期不良に悩まされたあと、小型・高出力の改良バージョンが登場しましたが、実際の探知能力は「優秀」とはいえず、その評判はいまひとつだそうです。
戦闘機開発を巡る苦難
いまでは空戦から対艦・対地攻撃まで行うマルチロール機となったF-2ですが、その開発は苦難の連続でした。
まず、初期構想を巡って国産開発派と外国導入派に分かれるなか、日本単独での戦闘機開発を懸念したアメリカが共同開発を「提案」します。
しかし、アメリカのF-16がベースにもかかわらず、その核心技術は開示されず、逆に日本側は炭素繊維材やレーダーなどの新技術を全てアメリカに提供しなければなりません。
日本にとって明らかに不利な条件でしたが、日米貿易摩擦で関係が冷え込むなか、政府としては防衛関係まで悪化させるのは避けたい形でした。こうしてアメリカ側の圧力に屈したわけですが、一連の紆余曲折は防衛関係者の間でトラウマとして残っています。
ただし、アメリカ側にも言い分があって、まずは日本が国産開発にかかる費用を甘く見積もっていたのは否めません。開発費を約1,650億円を算定した日本に対して、アメリカはこれを「過少」と警告しており、実際の最終費用は3,000億円を超えました。
そして、同盟国・日本が多額のお金を費やしたうえで戦闘機開発に失敗するのは、アメリカの対ソ戦略上は好ましくありません。世界規模の戦略を展開するアメリカですから、こうした東西冷戦への悪影響を考えていた可能性もあります。
現状と後継について
さて、F-2戦闘機は対ソ連を念頭につくられましたが、その運用が始まったのはソ連崩壊後の2000年でした。それでも防衛上の重要性は変わらず、計94機が調達されてF-15に次ぐ主力機として運用されています。
また、ソフトウェアなどを改良しやすい準国産機の利点を活かして、空戦能力の向上や誘導爆弾「JDAM」の搭載を実現するなど、初期配備時と比べて各性能が大きくアップグレードされました。
一方、予算不足から予備部品が足りておらず、F-2の一部はパーツを取り出すための草刈り場となっています。
こうした共食い整備のせいで稼働率が落ち込むなか、そろそろ機体寿命を迎えることから、早ければ2035年には退役が始まる予定です。気になる後継機については、イギリス・イタリアとともに開発する最新鋭のステルス戦闘機がその座に就きます。
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