自衛隊の最新榴弾砲！19式装輪155mm自走砲が秘める性能

軽量化・高機動力を目指して

陸上自衛隊は戦車や歩兵（普通科）のイメージが強いですが、これらを火力支援する特科部隊、いわゆる砲兵も忘れてはなりません。

特科部隊の火砲群のうち、「FH70」155mm榴弾砲は老朽化が進み、その後継である「19式装輪自走155mm榴弾砲」が配備されています。

• 基本性能：19式装輪自走155mm榴弾砲

まず、自走砲とは「自力走行できる火砲」を指しますが、火砲は同じ場所で連続射撃すれば、すぐに位置がバレやすく、敵の反撃を受けてしまいます。

それゆえ、いまは短時間で数発を撃ったあと、次の陣地に移動する「シュート・アンド・スクート」という戦術が欠かせません。

現在も「FH-70」は主力火砲にあたり、堅実な性能と信頼性を誇るものの、限られた自走機能しかなく、陣地変換が必須の現代火砲戦には不向きです。

一方、19式装輪自走砲は荷台に155mm砲を持ち、軽快に動ける高機動力を手に入れました。

これはシュート・アンド・スクート戦術を意識した結果であり、現場到着から射撃開始まで約1分しかかからず、FH70がまだ準備中に次の陣地に移動します。

このように射撃準備から撤収までの時間が短く、現代砲兵戦には適した火砲ですが、非装甲のトラックを使っていることから、あまり生存性は期待できません。

99式自走榴弾砲と比べれば、被弾時の生存確率は明らかに低く、防護力と引き換えに高機動になった形です。

重い装甲で機動力を犠牲にするのではなく、軽量化・機動力で反撃を回避する発想ですが、スウェーデンのアーチャー自走榴弾砲にもみられるように、各国における近年のトレンドになっています。

この運用思想を取り入れたところ、19式装輪自走砲は99式自走砲より約40%も軽いものの、その車体は被弾・至近弾にかなり弱く、隊員はむき出し状態での操作せねばなりません。

それでも、重量25トンの火砲は日本国内の橋梁をほとんど通れるうえ、空自のC-2輸送機による空輸・機動展開が可能になりました。

さらに、最高時速100kmという路上機動力を持ち、他の部隊とともに行動しやすくなり、本州・四国に配備中の16式機動戦闘車との連携できます。

デジタル化で効率改善

さて、155mm砲は左右45度の射角、約40〜50kmの射程を持ち、装填作業は砲弾は自動式、装薬は手動式という「半自動装填方式」を採用しました。

陸自の全弾種に対応しているほか、西側標準の自走砲としてNATO各国とも互換性があります。したがって、自衛隊では未導入のエクスカリバー砲弾（GPS誘導式）も理論上は使用可能です。

射撃する19式自走榴弾砲（出典：陸上自衛隊）

一方、射撃は直接照準ではなく、従来と同じ間接射撃であって、引きつづき観測部隊や射撃指揮所との連携が欠かせません。

この点については、指揮統制向けの専用システム（FCCS）が高精度射撃につながり、FCCSから送られた情報をタブレット入力すれば、照準を合わせられます。

機動性を高めながら、射撃手順も簡素化したわけですが、システム・ダウンに備えて光学照準器も残しました。

そんな19式は富士学校（富士教導団）への優先配備後、最終的に227両が調達予定です。

まだ役立つ！陸自の155mm榴弾砲「FH70」の射程と後継

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2022.05.15