失敗した「買い物」
高い戦闘攻撃力を持ち、当時としては最強クラスのAH-64Dを導入したわけですが、自衛隊では約90機のAH-1コブラを置き換えるべく、本来は62機をそろえるつもりでした。
こうした調達計画にもかかわらず、最終的にはたった「13機」になりました。
あまりに計画とかけ離れた理由は、「コスト高騰」「AH-64Dの生産終了」にあります。
もともとは富士重工業(SUBARU)がライセンス生産すべく、生産ラインなどの設備投資も完了済みでした。ところが、自衛隊特有の少数調達のせいで単価がはね上がり、1機あたり約80〜90億円という値段になってしまいます。
加えて、アメリカ本国でAH-64Dの生産が終わり、さらなる発展型の「AH-64E」に移行したため、部品調達とサポート面で不安が生じました。
この時点では、E型へのアップグレードという可能性も残っていました。
というのも、AH-64Eは全天候対応は言うまでもなく、探知した250個以上の目標のうち、わずか数秒で脅威度の高いものを識別できる性能を持つからです。
しかしながら、その費用対効果が疑問視されたこともあって、防衛省はAH-64シリーズの調達を中止しました。
ただ、富士重工業は60機以上の生産計画に基づき、すでに設備投資とライセンス生産料を支払っていたため、この金額が残りの調達機数に上乗せされました。
その結果、1機あたり200億円超という戦闘機を超える値段になり、まさに「失敗した買い物」になった形です。
いまは九州・目達原駐屯地に集中配備されているとはいえ、痛ましい事故で1機失ったことで12機編成になり、ローテーションを考えれば、いつも稼働状態にあるのは多くて5機ほどでしょう。
離島奪還では近接航空支援を行うべく、海上自衛隊のヘリ空母を使った訓練もしていますが、12機というのは戦力としては足りません。
こうしたなか、防衛省は組織改編の一環として、攻撃ヘリ自体を廃止したうえで、新しい無人機で置き換えるつもりです。
したがって、自衛隊のAH-64Dは運用構想を確立できないまま、消えゆく運命になりました。
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