対地攻撃から制空までこなす
武装については対空や対地、対艦ミサイル、誘導爆弾、ロケット弾などのあらゆる武器に対応している一方、全体搭載量ではF-15戦闘機にはおよびません。
ただ、アメリカも対地攻撃には戦闘爆撃型のF-15ではなく、F-16を好んで使う傾向があるようです。
対地攻撃任務では低空飛行せねばならず、低高度における運動性能に優れたF-16の方が適任といえます。また、対空砲火などによる損害が出やすく、高価なF-15よりも安価なF-16の方が投入しやすいという心理的作用もあるかもしれません。
では、制空任務ではどうなのか?
もともとF-16は良好な機動性を目指して開発されたので、空中格闘戦でも十分に戦えるうえ、これが低高度域であればなおさらでしょう。
1982年のイスラエルによるレバノン内戦への介入では、イスラエル側のF-16がシリア軍の戦闘機を空戦で多く撃墜しました。
最近では、撃ちっぱなしの誘導ミサイルを使った遠距離攻撃にシフトしていますが、いまもF-15とともに世界最高峰の戦闘機として認識されています。
マルチ能力が魅力のF-16戦闘機(出典:アメリカ空軍)
こうした魅力もあって、多くの改良型・派生型も生まれており、その配備先は韓国や台湾、ポーランド、オマーンなど計25カ国にもおよびます。
また、ロシア=ウクライナ戦争ではNATO諸国からウクライナに対して、60機以上のF-16が提供されました。これらはF-35戦闘機の配備によって押し出された中古余剰機ですが、旧ソ連製の機体ばかり使っているウクライナにとっては航空戦力を飛躍的に底上げするものです。
最新型「F-16V」も開発済み
さて、F-16の登場から半世紀以上が経過するなか、アメリカはF-16を最新のF-35で置き換えるはずでした。
しかし、予算の関係から全て更新するのは難しく、残っているF-16は延命改修してあと20年間は運用するつもりです。
それどころか、F-35に搭載されているものと同じ技術を使った新型レーダーを組み込み、「F-16V」という新しいバージョンをつくりました(「V」は非公式名称の「バイパー(ヘビの一種)」から取ったもの)。
おかげで各国が保有しているF-16の更なる近代化改修が可能となったわけですが、費用対効果を考えれば、最新鋭のステルス戦闘機よりも使いやすく、まだまだ需要があるといえます。
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