高すぎる基地防空用ミサイル
この後継たる基地防空用SAMは陸上自衛隊の11式短距離地対空誘導弾(11短SAM)のことを指しますが、空自では高機動車の後部に4連装の発射筒を搭載しています。
このように搭載車両こそ違えど、陸自と同じものを使っているわけですが、重要拠点を守る近距離防空という目的は一緒なので問題はなく、むしろ共通化することで開発費が100億円近く節約できたそうです。
⚪︎基本性能:基地防空用地対地誘導弾
全 長 | 2.93m |
直 径 | 0.16m |
重 量 | 103kg |
射 程 | 10km以上 |
価 格 | 1セットあたり約30億円 |
この基地防空用SAMは誘導方式としてミサイル自身が目標に電波を照射しながら向かうアクティブ・ホーミングを採用しており、いわゆる「撃ちっ放し」能力を持っています。
そのため、同時に複数の目標を迎え撃つことができるうえ、超音速ミサイルや低空で侵入してくる巡航ミサイルに対する対処能力も向上しました。
運用時は同じく高機動車に搭載したレーダーや射撃管制システムとともに行動しますが、より上位の防空システムに繋いでの迎撃を行えるようになりました。
搭載車両に高機動車を採用することでトラック搭載型の81式短距離地対空誘導弾と比べて機動力とメンテナンスの点で優れており、必要あればC-2輸送機などで他の飛行場にも展開可能。
ただ、この基地防空用SAMも国産装備に必ずついて回る難点「少数生産によるコスト高騰」から逃れることができず、陸自と共通化しているにもかかわらず1セットあたりの価格は約30億円となっています。
こうした高価格も災いしてか、調達スピードは毎年1セットとスローペースであり、現在は10セットも導入できていません。
最終的には1セットあたり20億円を目指しているものの、「高い→少数調達→また高くなる」の悪循環に陥る可能性があり、全ての基地防空隊で必要数が揃うまではまだ時間がかかりそうです。
このように、高コストが原因で陸自も含めてまだ数が揃わない中、実は後継の計画がすでに始動しました。
計画では2022年から4年間で50億円以上をかけて「基地防空用地対空誘導弾(改)」を新たに開発しますが、これは改良型というよりは全く別のミサイルになります。
要するに携帯式防空ミサイルを車載化した「近距離ミサイル(近SAM)」になる見込みですが、現在の「短SAM」よりも射程距離は短くなると推測します。
一方、高機動車に搭載できるミサイルの数は4倍の計16発に増えることから、防衛省としては比較的安価なミサイルで「数」を揃え、多数かつ小型の目標に対する迎撃能力を向上させるのが狙いでしょう。
とはいえ、ミサイル自身も性能を向上させる予定であり、超低空飛行の巡航ミサイルや自爆型を含む無人攻撃機に対応する能力を付与するそうです。
事実上の近SAMである基地防空用地対空誘導弾(改)も陸自との共通化を図り、「新近距離地対空誘導弾」という名称で用いられるそうです。
一応、また陸自と同じミサイルを使うことでコストを下げるつもりですが、自衛隊以外の顧客が存在しないのは変わらず、結局は少数生産によるコスト高騰の呪縛は逃れられないのではないでしょうか。
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