アメリカの短射程・対地ミサイル
「マーベリック」と聞けば何をイメージしますか?
大抵の人は映画トップガンの主人公を思い浮かべるなか、現実のアメリカ軍にもマーベリックと呼ばれるものがあります。
ただ、それはトップガンのような凄腕パイロットではなく、戦闘機などから発射する空対地ミサイルのことです。
- 基本性能:AGM-65 マーベリック空対地ミサイル
重 量 | 304kg |
全 長 | 2.49m |
直 径 | 0.31m |
速 度 | 時速1,150km |
射 程 | 約30km |
価 格 | 1発あたり約1,400万円 |
「マーベリック」とは独自路線を貫く一匹狼の意味を持ち、そう命名された空対地ミサイルはベトナム戦争末期の1970年代初めに実戦投入されました。当時としては優れた運動性能を誇り、画像誘導による命中率も高いと評判でした。
弾頭部分は軽量(57kg)もしくは通常(136kg)の2つから選び、前者は着弾とともに爆発する成形炸薬タイプ、後者は目標を貫き、遅延信管で内部から破壊します。
その後、海兵隊や海軍も採用したところ、レーザーや赤外線誘導を使う派生型が生まれたほか、同盟国・友好国を中心に30カ国以上に輸出されました。
輸出版は第四次中東戦争やイラン・イラク戦争において、地上目標を撃破する戦果をあげたものの、マーベリックの販売を一気に押し上げたのは1991年の湾岸戦争でした。
湾岸戦争が初の本格投入となり、イラク軍に対してF-15E戦闘機やF-16戦闘機などが5,000発以上も放ち、約80〜90%の命中率を叩き出しました。その結果、イラク軍の戦車部隊は壊滅状態になり、ピンポイント爆撃の一翼を担った形です。
なかでも、対地攻撃の鬼であるA-10攻撃機の活躍ぶりはすさまじく、最大14発ものマーベリックを搭載しながら、その恐るべき本領を発揮しました。
海自も導入したが・・・
湾岸戦争での大量投入、それにともなう戦果で信頼性を勝ち取り、マーベリックは頼れる対地ミサイルの仲間入りを果たしました。
しかも、さまざまな航空機で使えるメリットもあり、戦闘機や攻撃機以外にも、戦闘攻撃ヘリやP-3C哨戒機でも運用可能です。
そのため、日本の海上自衛隊もP-1哨戒機向けに導入しており、限定的な対地攻撃能力を獲得しました。
ただ、マーベリックの射程は約30kmと短く、必然的に母機が目標に接近せねばなりません。そうなると、機動性に欠ける哨戒機では防空ミサイルの餌食になりやすく、こうしたリスクを犯してまで、P-1哨戒機を投入するとは考えづらいです。
まともな防空装備を持たないテロ組織、すでに防空能力を失った相手ならば、十分すぎる戦果を期待できるものの、まだ防空網が機能している場合、どこまで通用するか怪しいです。
結局は航空優勢下での使用が前提となり、マーベリック自体も登場してから半世紀以上が過ぎているため、新たに「JAGM」という統合空対地ミサイルが開発されました。
この「JAGM」はマーベリック、そしてヘルファイア対戦車ミサイルの後継にあたり、将来的には取って代わられます。
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