イタリアの軽空母「カヴール」、その多目的な能力・任務とは？

「軽空母＋揚陸艦」の船

冷戦期にソ連の黒海艦隊と対峙する役割を与えられたイタリアは、いまでも地中海屈指の海軍力を誇り、スペインやフランス、アメリカ第6艦隊（イタリア駐留）とともに、NATO地中海艦隊の一翼を担う存在です。

そして、その中核となるのが2隻の軽空母であって、2008年に就役した最新空母「カヴール」はF-35Bステルス戦闘機を搭載して航空戦力を飛躍させました。

• 基本性能：軽空母「カヴール」

建造中に2回も艦名が変更された「カヴール」は、イタリア統一に貢献した王国時代の首相にちなんで名付けられたもので、アフガニスタンの首都・カブールとは関係ありません。

それまでの「ジュゼッペ・ガリバルディ」よりひと回り大きい船体には、戦闘機が発艦に使うスキージャンプ台と7つのヘリコプター発着スポット、舷側エレベーターが設けられました。ゆえに、固定翼機の運用能力は大きく強化された形です。

すでに固定翼機はF-35B戦闘機へと移行済みで、その数は通常時で10機ほど、甲板に露天駐機すれば最大16機まで増やせます。

また、強襲揚陸艦の役割も期待されているため、小型揚陸艇4隻と最大400名以上の海兵隊員を収容できるほか、格納庫には24両のアリエテ戦車、または50両近い装甲兵員輸送車を積載可能です。

さらに、3つの手術室を含む医療設備が整っており、大型輸送ヘリを使った揚陸作戦や対潜戦、海洋監視、災害救援などあらゆる任務に対応できます。

「軽空母＋揚陸艦」というマルチ能力を持つなか、他国の軽空母より重武装なのも特徴的です。

それは近接火器として速射砲×2門、機関砲×3門、防空兵器として8つの垂直発射装置（VLS）を装備するというフリゲート並みです。

さまざまな機能と武装を詰め込んだ背景には、イタリアの厳しい財政事情も絡んでいて、同型艦が建造されなかったせいで「ワンオペ運用」も強いられてきました。

それでも、地中海有数の戦力を持つイタリア海軍の象徴であり、同じNATO地中海艦隊を構成するフランスの原子力空母「シャルル・ド・ゴール」と似た立ち位置にあります。

戦力的にはフランス空母に劣るとはいえ、貴重な軽空母を提供することで、NATOへの貢献という役割を果たしています。