高性能な海底ソナー網
潜水艦の発見は現代技術をもってしても難しく、海上自衛隊は「対潜の鬼」を目指す関係から、ソナー技術の向上や対潜哨戒機の拡充を絶えず行ってきました。
海自ではP-1哨戒機の定期パトロールに加えて、護衛艦に載せたSH-60哨戒ヘリを使いながら、上空からの対潜活動を実施していますが、じつは海底に固定したソナー・システムでも監視しています。
このソナー網は「SOSUS(ソーサス)」の名を持ち、英語で音響監視システムを略したものです。もともとはアメリカが冷戦期につくり、ソ連の原子力潜水艦を警戒すべく、大西洋と太平洋の重要海域に張り巡らしました。
海底に数百から数千単位の固定式ソナーを置き、潜水艦の音を拾う仕組みですが、磁気や熱を探知するセンサーもあるほか、これらはケーブルで陸上施設とつながっています。
そして、日本も対ソ連の要衝として、国産SOSUSの運用を始めたものの、この最高機密はいまだに謎が多く、設置箇所も津軽海峡と対馬海峡しか判明していません。
しかしながら、その他の重要海域や戦略的な海峡、特に中国潜水艦が活動する南西諸島方面についていえば、宮古海峡を中心に設置済みと考えられます。
具体的な性能は不明ながらも、アメリカ版は条件次第で最大1,000km先の音を拾えるとされており、同じく広範囲を探知する音響測定艦とも連携可能です。こうした点をふまえると、日本のSOSUSも似た性能を誇ると思われます。
日米で中国を封じ込む
米海軍のSOSUS網は日本周辺まで伸び、南西諸島を含む西太平洋までカバーするなか、長年にわたる海自との協力体制、日米共同運用の機運を受けて、両者のSOSUSは連接していると考えるのが自然です。
一方、海洋進出を進める中国も負けておらず、独自のSOSUS網を南シナ海と東シナ海につくり、測量艦や海洋調査船を繰り出しながら、日米側の設置箇所を調べています。
SOSUSは定点観測に向いているため、対潜戦を左右する海水温や塩分濃度の変化を調べたり、データをこと細かく記録するには適した装備です。長らく運用してきた日米はデータ蓄積では勝り、とりわけ沖縄周辺の海域は日本の「庭」にあたり、日米の海軍が地理的特性を知り尽くしています。
一方、台湾周辺や南シナ海は中国に近く、特に後者は人工島の建設(軍事基地)もあって、もはや「北京の湖」と化しました。それゆえ、台湾海峡と南シナ海、東シナ海西部は中国有利が否めず、日米側はデータ不足の感があります。
もし台湾有事が起きた場合、台湾周辺は言うまでもなく、沖縄周辺も「戦域」には入り、潜水艦を巡る戦いは避けられません。したがって、日頃からのデータ蓄積が大きな意味を持ち、今後も両陣営のSOSUS網が強化されていくはずです。

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