軽空母に?スペインの強襲揚陸艦「ファン・カルロス1世」

強襲揚陸艦 外国
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F-35Bを搭載予定だった

このように揚陸機能を充実させながらも、飛行甲板にスキージャンプ台を設置したところ、固定翼機を運用できるようになりました。格納庫にはハリアー戦闘機が10機は入るなか、将来的にはF-35B戦闘機を搭載するはずでした。

スペインでは2013年に唯一の空母が退役したため、「ファン・カルロス1世」はその重要な役割を引き継ぎ、空母保有国の地位を維持する狙いもあります。

ただ、予算不足で正規の空母はつくれず、強襲揚陸艦に軽空母機能を盛り込み、なんとか戦力低下を防いだ形です。これは同じ地中海地域を担い、強襲揚陸艦の機能も併せ持つ、イタリアの空母「カヴール」と似ています。

F-35B戦闘機を載せるならば、その編成は「F-35B×12、ヘリ×12」の可能性が強く、日本の「いずも型」より多いと思われました。

この数はアメリカの原子力空母、フランスの空母「シャルル・ド・ゴール」には敵わないものの、地中海ではこれらに次ぐ航空打撃力を誇り、相当な戦力投射能力といえます。

ところが、トランプ政権による同盟国軽視の姿勢を受けて、2025年にスペインはF-35Bの購入を取りやめました。不安定なアメリカから距離を置き、欧州重視にシフトした形ですが、代替の戦闘機は見当たらず、無人機の運用を考えているそうです。

本音では戦闘機を載せたいものの、地中海方面での脅威を考えると、別に無人機でも代替は可能でしょう。本来の仮想敵はロシアですが、その海軍は弱体化が進み、ウクライナ侵攻で地中海どころではありません。

飛び地を守る存在として

軽空母にもなれるとはいえ、「ファン・カルロス1世」は1隻だけの建造で終わり、稼働率の維持には苦心してきました。

では、そこまで苦労してでも、強襲揚陸艦(軽空母)を保有する理由とは?

これには大きく2つの理由が考えられます。

まずは先述のとおり、NATO加盟国としての責任を果たすべく、その地中海艦隊に戦力を提供するためです。

そして、もうひとつが大西洋と地中海、北アフリカにあるスペイン領を守る狙いです。

スペインは大西洋上のカナリア諸島、地中海上のバレアレス諸島に加えて、北アフリカにも飛び地(セウタ・メリリャ)を領有しています。

対岸のアフリカ大陸にあるにもかかわらず、これら飛び地は植民地時代の名残からか、現在もスペイン領として残ったままです。当然、隣接するモロッコは返還を要求しており、両国関係における緊張材料となっています。

また、この飛び地はEU圏になるため、近年は亡命の中継点として難民が入り込み、治安面での不安定さを抱えています。

したがって、スペインは「対岸の火事」に対処するべく、揚陸能力を確保しておかねばならず、たとえ財政的には厳しくとも、強襲揚陸艦が必要というわけです。

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