まともに活動できず、将来も暗い
さて、ロシアが誇る重武装の空母「アドミラル・クズネツォフ」ですが、就役後しばらくはソ連崩壊の影響でほとんど活動できませんでした。
経済的苦境と財政難に悩んでいた当時のロシアは大型空母を動かす余裕なく、この間は整備不良などで出港すらできない状況でした。
その後、プーチン政権下で修理・整備が行われ、2004年にようやく空母機動部隊を組んで外洋での本格訓練に挑みました。こうした訓練と定期整備を繰り返しつつ、2017年にはシリア内戦で初めて実戦投入されます。
しかし、訓練・実戦の双方でエンジンと着艦装置の不具合、艦載機の墜落事故が起きており、これら運用上の課題を解決するために大規模な近代化改修を受けました。
機関に問題があるとされた「アドミラル・クズネツォフ」（出典：ロシア国防省）
ところが、2018年には入っていた浮きドックの沈没事故、2019年には火災が発生して追加修理と復帰の延期を余儀なくされます。ようやく修理・改修が完了した2022年末にまたしても火災が起きたと報道され、当初2021年に予定していた海軍への引き渡しは早くても2025年になる見込みです。
度重なるトラブルと火災事故、そして復帰延期の裏にはロシア社会にはびこる汚職も強く影響しているとみられ、今後の「アドミラル・クズネツォフ」と計画されている次期空母の建造に暗い影を落としています。
そもそも、ロシアがいま置かれている戦略環境を考えれば、金食い虫で費用対効果があまり望めない「アドミラル・クズネツォフ」の維持は優先順位が低いはず。
それでも、苦しい経済状況のなかで約1,000億円かけて改修して、あと25年間は使うつもりのようです。これには大国としての「威信」を保持したい動機、そして手放せばもう二度と大型空母を建造・運用できなくなるとの危機感があるのかもしれません。
ただ、エンジンを含む数々の不具合に見舞われた「呪われた空母」は信頼性が低く、改修後に復帰してもきちんと機能するかは怪しいしょう。
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