自爆ドローンの脅威
ドローン(無人機)の本格登場によって、地上戦の様相は大きく変わり、特に徘徊・自爆型の活躍は目覚ましく、その対策が急務となりました。
ウクライナでは砲兵戦力とともに、自爆ドローンが敵の前進を鈍らせており、たとえ戦車であっても、撃破されるケースが相次ぎました。上空で待機しながら、装甲車両に次々と突っ込み、逃げる歩兵を追い回すことから、日中の野外行軍は無謀とさえいわれています。
自爆ドローンに破壊される戦車
このような事態を受けて、戦車は役に立てない、あるいはその役割が終わり、もう不要との声が現れました。いわゆる「戦車不要論」ですが、これは別に新しい意見ではなく、昔から定期的に浮上してきたものです。
過去をふり返れば、対戦車ミサイルが開発されたとき、対戦車ヘリが登場したときも、戦車の時代は終わったとされました。今回は自爆ドローンが引き金になり、その前では機動打撃力を活かせず、一方的に狩られるという論調です。
たしかに、戦車は空からの攻撃に弱く、ドローンが脅威なのは否めません。まともに直撃を受けた場合、主力戦車でさえ戦闘力を失い、従来より活躍しづらくなったのは事実です。少なくとも、これまで以上に上空警戒せねばならず、行動の自由も制約されました。
対戦車戦は「戦車」で
以前ほど大胆な運用ができず、使う場面が難しいものの、それだけで「不要」とはなりません。
ジャンケンでいえば、グーはパーに負けるが、それでも必要なのと同じです。
戦車は数ある兵器のひとつにすぎず、歩兵や航空機と組み合わせながら、その強みを発揮してきました。「諸兵科連合」という考え方ですが、それぞれの特性を活かすべく、適材適所の運用を目指すものです。
かつて騎兵は歩兵に強く、その騎兵は砲兵に弱く、逆に歩兵は砲兵に強いとされていました。それゆえ、三者を組み合わせて戦い、相性のよい敵にぶつけてきました。これは戦車も変わらず、結局は投入する状況、ぶつける相手次第です。
ジャンケンの例に戻ると、パーに弱いならば、その相手はチョキに任せて、自分は敵のチョキを倒せばいいだけ。パーに負けるからといって、グーそのものをなくしたら、今度はチョキに勝てなくなります。
こちらが戦車部隊を廃止して、逆に敵が戦車を持ってきたら、それこそ一方的な狩りなるでしょう。なぜなら、敵の戦車に対抗するにしても、最も有効な手段は同じ戦車だからです。
いくら自爆ドローンが効果的でも、それだけでは敵の戦車部隊は阻めず、ウクライナも砲兵や歩兵、戦車を連携させながら、複合的なアプローチをとってきました。
対戦車ミサイルも効果的とはいえ、ジャベリンのみでは戦車の代わりは務まらず、歩兵向けの支援火力、自衛手段にすぎません。こうした兵器は攻撃時に身をさらしたり、ある程度は接近せねばならないため、思っているよりもリスクは高いです。
歩兵の目線に立てば、戦車相手に身をさらす恐怖はすさまじく、戦車の存在は心理的な影響も与えてきました。味方の戦車がいる・いないでは、歩兵の損害率が異なるほか、現場の安心感と士気にも関わってきます。
また、最近は榴弾砲が高精度になり、砲撃にする死傷率は高いままですが、近距離砲撃では戦車の方が役立ち、正確性や恐怖感でも勝ります。
これらの点をふまえると、他の兵器でも戦車を倒せるものの、難易度やリスクはハネ上がり、必要以上の損害を覚悟せねばなりません。それならば、最初から戦車には戦車をぶつけて、人的損害を最小限にとどめるべきでしょう。
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