なぜそこに基地?ジブチの自衛隊拠点の生活について

ジブチの自衛隊 自衛隊
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目的は海賊対処

自衛隊は日本の防衛を任務としながら、近年は海外での活動も増えており、海賊対処や邦人救出、人道支援などを行ってきました。なかでも、商船をソマリア海賊から守り、死活的な海上交通路を確保すべく、2009年から護衛艦とP-3C哨戒機を派遣しています。

このソマリア海賊の対策にあたって、自衛隊は近隣のジブチに活動拠点を置き、2011年に自衛隊初の海外基地を開きました。ジブチは人口100万人の小国ながら、紅海とアデン湾のつなぎ目にあるため、世界が無視できない地政学上の要衝です。

ジブチとその周辺が不安定化すれば、海上交通と世界の物流に悪影響がおよび、その経済損失は計り知れません。それゆえ、ソマリア海賊を討つ拠点として、戦略的要衝のジブチに各国が集まり、そこにはアメリカ、フランス、イタリア、中国が含まれます。

ジブチの自衛隊拠点と活動のイメージ図ジブチでの活動内容(出典:防衛白書)

日本も海上護衛を果たすべく、ジブチ国際空港の隣に拠点を開き、戦後初の海外基地を設けたわけです。ジブチの港には護衛艦も寄り、定期的に食料や物資を補給するため、その作業を円滑化する狙いもあります。

また、中東情勢が緊迫化すると、航空自衛隊の輸送機を送り込み、邦人救出の最寄り拠点として機能します。

国際関係の視点で考えると、中国がジブチに巨大な軍事基地を築き、周辺に対する影響力を強めるなか、日本が米仏とともに基地を置き、プレゼンスを示す意義は大きいです。

そんな自衛隊初の海外拠点ですが、当初は米軍基地を間借りしていたところ、さすがに不便が否めず、自前の拠点を構えました。それは約15ヘクタール(東京ドーム×3)の広さを持ち、約400人の隊員が4ヶ月交代で駐留しています。

主に海上自衛隊の哨戒機、整備部隊が活動するなか、基地の運営と警備を担うべく、陸上自衛隊からも約80人が派遣されました。この基地警備では小火器に加えて、軽装甲機動車を運び込み、隊員は砂漠向けの迷彩服を着ています。

ジブチの自衛隊基地ジブチ国際空港、赤丸が自衛隊拠点

慣れない異国、過酷な環境下での任務のためか、隊員はエアコン完備の個室を与えられており、宿舎はインターネットと大浴場も備えました。通常は2〜4人の相部屋に住み、完全個室は「超レア」ですが、気温50度での海外勤務を考えると、これぐらいの待遇は当然でしょう。

ほかにも、食堂と売店、体育館、簡易ジムがあって、厚生棟にはテレビとマンガ、ゲームが置いてあります。日本食の提供は言うまでもなく、4ヶ月間は娯楽を含めて、なるべく基地内で完結できるようにしています。

一方、市内には飲食店や市場が並び、大型のショッピング・モールもあるなど、外出先にはそこまで困りません。トラブル発生のリスクをふまえると、あまり推奨はされないでしょうが、一般的なアフリカとは違うイメージです。

なお、海外派遣には相応の特別手当がつき、艦艇の乗組員と航空要員、地上勤務で違うものの、約4,000円/日はもらえるそうです。

不平等な地位協定

ところで、日本はジブチと地位協定を結び、自衛隊を駐留させていますが、それは日本側が圧倒的に有利なもので、明治時代の不平等条約を思わせる内容です。

たとえば、現地で自衛隊が事件や事故を起こしても、公務中・公務外にかかわらず、日本側の法律が適用されます。言いかえると、ジブチに司法権はなく、日本に治外法権がある形です。

不平等レベルでいえば、日米地位協定よりもひどいですが、これは別に押しつけた訳ではなく、ジブチの外交方針が関わっています。

まず、ジブチは立憲民主主議とはいえ、実際は強権的な政治を行い、事実上の一党支配体制です。現在のゲレ大統領は5期目にあたり、1999年からジブチを支配してきました。

そして、要衝にある小国として生き抜くべく、米仏中などの「列強」を誘致しながら、その駐留を通して安全保障を確保しています。

外国軍の基地は安全保障のみならず、使用料と経済支援をもたらしており、雇用などの波及効果を合わせると、もはやジブチ経済に欠かせません。すなわち、ジブチは基地依存国家でもあって、基地ビジネスで経済を回しています。

もちろん、自衛隊はジブチと共同訓練したり、能力支援活動をしているものの、ジブチにとっては副産物にすぎず、本当の目的は安全保障、経済利益ので確保す。

だからこそ、外国軍の治外法権よりも、安全保障上・経済上の実利を優先しました。それは国民にとっては不平等ながら、実質的な終身大統領の方針、小国ならではの狡猾な外交政策の結果です。

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