問題は人手不足
10年越しの努力によって完成した22隻体制ですが、この間にも中国海軍の増強は止まらず、海自との戦力差はさらに開いてしまいました。
現に「22隻+2体制」では足りず、最低でも30隻は必要という声があります。
「自由で開かれたインド太平洋構想」を目指す関係から、海自の活動範囲はかつてないほど広がっており、効果的な戦力増強を行うならば、潜水艦隊のさらなる拡張は有効策のひとつです。
ところが、根本的課題としての人手不足は解消しておらず、少子化が進むなかで自衛隊の定員割れは今後さらに深刻になります。
特に潜水艦勤務は護衛艦よりも狭く、制約の多い艦内で長期間生活するうえ、任務の機密性から家族との連絡もままなりません。
代わりに手当や食事面では優遇されていますが、それでも相当なストレス耐性がなければ潜水艦勤務は務まらず、スマホやネットが欠かせない現代の若者には「ありえない」環境でしょう。
潜水艦乗り(サブマリナー)は自衛隊でも特に誇り高く、ある意味「選ばれし者」だけがなれる職業です。
そこには軍人にとって大事な「名誉」は確かにありますが、いまの若年層を引きつけるには手当のさらなる増額など「実利的なメリット」が求められます。
また、隠密行動を行う潜水艦と現代の必須アイテムであるネット環境は相反するものですが、この問題をなんとかしない限りは若者の志願増は難しいでしょう。少なくとも、限定的ながらも一定の通信手段や代替娯楽を用意するなどの「努力」はすべきです。
忘れてはならないのが、入隊者は全てが国防を志して入ってくるわけではなく、国家公務員や福利厚生に恵まれた仕事として選んだ人も大勢いること。この点をきちんとふまえなければ、年々減りゆく採用対象層に対して効果的なアピールができません。
海自は22隻体制を完成させるだけでも相当苦労したはずで、現状もギリギリ維持していると思われます。
仮に30隻体制を掲げても、まずは人員確保の問題をどうにかしないとは意味がなく、せっかく苦労して確保したサブマリナーたちが辞めないようにするのが最優先です。
今の22隻体制を支えるサブマリナーをどう留まらせるか注力するなかで、将来の隊員確保へのヒントが得られるかもしれません。
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