攻撃範囲の飛躍的拡大
長距離攻撃兵器を切望してきたウクライナにとって、250km先を狙えるストーム・シャドウはまさに「渡りに船」といえる存在です。
ここで注意したいのが、250kmという射程はあくまで「輸出版」にあたり、イギリス自身が使っているのは最大550km以上とされています。
どちらがウクライナに渡ったのかは不明ですが、いずれにせよ長距離打撃力が飛躍したのは間違いありません。
では、ストーム・シャドウはどのように使われて、どのような影響をもたらしたのか?
まず、欧米が長射程兵器の供与を渋ったのは、ロシア領への直接攻撃に使われる懸念があったからです。そのため、当初はロシア本国は攻撃しない約束に基づき、供与が実現しました。
さらなる支援を引き出すためには、こうした約束を守らねばならず、あくまで被占領地域でのロシア軍を叩き、その戦果と運用能力を示してきました。
HIMARS高機動ロケット砲により、ロシア軍は弾薬庫や司令部を後方に下げましたが、ストーム・シャドウはこれら重要拠点を狙ってきました。
たとえば、前線から100km以上も離れたクリミアの黒海艦隊司令部を攻撃したり、停泊中の揚陸艦や潜水艦の破壊に成功しています。
それまで射程圏外にいたロシア軍は逃げ場を失い、戦略的に重要なセヴァストポリ軍港も安全圏ではなくなりました。その結果、黒海艦隊はクリミア半島から事実上撤退しました。
すなわち、黒海の制海権確保をあきらめただけでなく、2014年にクリミアを併合した意味が失われました。
このような戦果をあげてきたなか、2024年11月にはロシア本国への攻撃許可も降りたため、さっそく奥地にある地下司令部を破壊しました。これはアメリカによるロシア領攻撃の許可に合わせた動きで、苦戦が続く状況をなんとか好転させたい意図が見えます。
しかし、ロシア領内の拠点を狙えるとはいえ、そもそもの供与数が少なく、戦局自体を逆転させるのは厳しいでしょう。
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