小型化、低コスト化を実現
日本を守る最後の砦である陸上自衛隊は対戦車のみならず、敵の上陸時に打撃を与える対舟艇火力の拡充に力を入れていて、79式対舟艇対戦車誘導弾(重MAT)のようなどちらも狙える多目的弾を開発してきました。
こうしたなか、2009年から配備が始まった「中距離多目的誘導弾」は複数目標に対する同時対処能力と撃ちっ放し能力を持ち、戦車から敵兵、陣地に至るまであらゆる地上目標に対応している点が高評価を獲得しています。
⚪︎基本性能:中距離多目的誘導弾(Middle range Multi-Purpose Missile:MMPM)
重 量 | 約26kg |
全 長 | 1.4m |
直 径 | 0.14m |
要 員 | 最低3名 |
射 程 | 8km以上 |
誘 導 | 赤外線画像 レーザー |
価 格 | 1セットあたり約8億円 |
「中多(ちゅうた)」の愛称で親しまれているこのミサイルは、もともと87式対戦車誘導弾(中MAT)の後継として開発されました。ところが、重MATを置き換えるはずだった96式多目的誘導弾システムが高コストによる調達難に陥り、最終的には中MAT・重MATの両方を更新する役目を果たします。
96式多目的誘導弾そのものは優れた性能を誇りますが、射撃管制装置などを含めた6つの車両で構成されるため、機動展開にはあまり向いておらず、1セットあたり20億円という高価格のせいで配備が進みませんでした。
このような教訓をもとに、中距離多目的誘導弾では発射機と誘導装置、射撃管制装置などを高機動車に全て載せてコンパクト化し、コスト削減と機動性の向上を実現しました。
その結果、現在までに約120セットが調達されて普通科の対戦車部隊に配備されていますが、これは96式多目的誘導弾の37セットと比べて歴然とした差です。
いろんな目標を同時対処
さて、高機動車で運用される中距離多目的誘導弾は折りたたみ式の発射機に最大6発を装填できるので、連続発射と多目標に対する同時対処を行えます。
そして、ミサイル自体は「和製ジャベリン」で知られる01式軽対戦車誘導弾の開発技術を使った赤外線画像装置を搭載しているため、発射後は自分で目標を見つけてロックオンする撃ちっ放し能力を獲得しました。
こうした自律誘導は対戦車・対舟艇攻撃には有効ですが、対ゲリラ戦のように人員や狭い地点へのピンポイント攻撃が必要であれば、レーザー照射による精密誘導を選択します。
このようにさまざまな地上目標を攻撃でき、同時対処能力と撃ちっ放し能力を兼ね備えた中距離多目的誘導弾は使い勝手がよく、頼りになる兵器です。
そして、各種機能をひとつの車両に集約したおかげで輸送ヘリ「CH-47J」への搭載や空自輸送機からの空中投下が可能となりました。これは離島防衛における機動展開の必要性を考えると、局地的な優位性をもたらす大きな長所といえます。
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