政治的産物でもある
一方、現代戦のF-15EXはステルスとはほとんど無縁の存在で、ネットワーク型戦闘を志向する最先端の戦いに対応しきれません。
また、米空軍はそもそもF-15EXを望んでいなかった事実があります。
これは旧式機の退役ペースに比べて、最新ステルス機などの配備が間に合わず、仕方なく「つなぎ」として生産したというもの。しかも、これには苦境にある航空機大手・ボーイング社を救うという裏事情もありました。
すなわち、F-15EXは運用する空軍側があまり望んでいないにもかかわらず、結果的に押し付けられた政治案件でもあるのです。
有力な非ステルス機
政治駆け引きの産物という側面を持つものの、F-15EXの優れた兵器搭載能力、すばらしい運動性能、航続距離の長さなどは、ステルス機が開いた突破口から侵入する二次戦力や控えとしては申し分ありません。
他方、平時の抑止力はステルス機でなくとも務まり、むしろ姿を見せて存在を示さねばなりません。非ステルス機でこれだけの性能を見せつければ、仮想敵には相当なプレッシャーを与えられます。
さらに、進化したとはいえ、F-15シリーズであるのは変わりなく、今までF-15を使ってきた国にとっては習熟期間や維持整備、相互運用面において使いやすいといえます。
2021年に披露されたF-15EXの量産機(出典:アメリカ空軍)
そんなF-15EXは米空軍による98機の調達が決まっているほか、ポーランドなどのNATO諸国が潜在市場となっています。ただし、米空軍向けの調達数がもともと144機だったのを考えると、やはり空軍としてはあまり望んでいないのがうかがえます。
また、日本はF-15EXを導入するつもりはなく、あくまでF-15Jのさらなる改修を目指す予定です。近代化改修が上手くいかなかったり、次期戦闘機計画がとん挫したら、F-15EXの緊急登板がありえないわけではないですが。
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