高性能だか、高コスト
さて、最強の名に恥じぬ性能を誇るF-22にも弱点はあります。
それは高性能だからこその高コストです。
しかし、基本整備に限れば、F-22は複雑な構造と最新能力を持ちながら、そこまで手間やコストがかかりません。なぜなら、デジタル端末による自己診断、モジュール交換だけで済むからです。
ただ、使用部品はどれも繊細なうえ、最高級の機密が多いことから、その修繕と情報漏洩の防止対策がコスト増につながりました。とりわけ電波吸収用の特殊素材・塗料は風雨に弱く、ひんぱんに手入れせねばなりません。
このような事情も加わり、1機あたり165億円以上になったわけですが、アメリカは海外輸出によるコスト削減はしませんでした。
その理由はF-22が最高機密の塊であり、同盟国経由で情報が漏れるのを危惧したから。
こうしたなか、日本は次期戦闘機としてF-22を望み、一時は可能性が見られたものの、生産終了を受けてとん挫しました。
もし日本への輸出が認められていたら、その単価は約200億円まで上がり、中国やロシアとの戦力バランスは一気に崩れたと言われています。
それだけ恐ろしい性能を秘めていたのです。
そんな最強戦闘機であっても、予算削減という難敵には勝てず、前述のように生産数は750機から187機に減りました。
この数はF-15戦闘機を更新するには到底足りず、最近はF-22の設計自体も取り残されつつあります。
あくまで1980年代の基本設計であったためか、最新の多機能ヘルメットに適応しておらず、赤外線を用いた追尾システムが搭載できないなど、使い勝手の悪さが目立ち始めました。
そこで、アメリカは高すぎるF-22ではなく、海外輸出も想定したF-35戦闘機に軸足を移しつつ、「つなぎ役」としてF-15EXを登場させました。
特にF-35は将来の拡張性が見込めるほか、近代化改修や能力維持がしやすく、マルチロール機としてF-22よりも「できること」が多いです。
つまるところ、F-22は高性能な制空戦闘機として生まれながら、その価格は現代には釣り合わず、マルチ能力が求められる時代に適応しきれませんでした。
この先もしばらく飛び続けるとはいえ、維持費問題とF-35の量産配備を受けて、その退役時期は早まるかもしれません。
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