スウェーデンの無反動砲
戦車は歩兵の脅威とはいえ、携帯式の対戦車兵器の普及により、一方的に狩られる側ではなくなりました。
こうした対戦車兵器のうち、「無反動砲」という種類がありますが、これは射撃時にガスを逆方向に放ち、前後の衝撃を釣り合わせるタイプです。言いかえると、同じ運動量の爆風が後ろに向かい、発射時の反動を相殺します。
しかも、単独運用できるほど小型・軽量になり、特に有名なのがスウェーデンの「カール・グスタフ」です。
初期型の「M1」から最新の「M4」にいたるまで、いくつかのバージョンがあるほか、日本の陸上自衛隊でも使われています。
- 基本性能:カール・グスタフM4(最新型)
重 量 | 6.8kg |
全 長 | 0.99m |
口 径 | 84mm |
要 員 | 2名 (標準) |
発射速度 | 毎秒255m |
射 程 | 対戦車弾:500〜1,000m 多目的榴弾:1,000m |
発射速度 | 最大6発/分 |
価 格 | 約200万円 |
カール・グスタフはシンプルな構造を持ち、それにともなう操作性の良さから、欧米を中心に世界40ヶ国が採用されました。
対戦車兵器であるにもかかわらず、多目的榴弾や照明弾、発煙弾などに対応しており、建物と陣地に対しても使用できます。
それゆえ、1982年のフォークランド紛争に始まり、イラク戦争、アフガニスタン戦争などの実戦投入が多く、最近ではロシアと戦うウクライナに供与されました。
なお、初陣といえるフォークランド紛争において、アルゼンチン海軍のコルベット艦を中破に追い込み、アフガニスタン戦争ではタリバンの陣地を破壊しました。
非常に使い勝手がいいものの、ジャベリン・ミサイルのように誘導機能はなく、それなりに目標に近づき、よく狙いを定めなければなりません。
ただし、新開発の対戦車弾を使えば、レーザー誘導機能が付いてくるほか、最大射程は2,500mになるそうです(その分、値段も高いが)。
カール・グスタフの発射(出典:アメリカ軍)
さて、対戦車弾は厚さ400mmの装甲を貫き、大きな貫通力を誇るとはいえ、ジャベリンの600〜800mmには劣り、84mmという口径を考えると、現代戦車には少しもの足りません。
「破壊」まではできずとも、被弾後は戦闘・走行に支障をきたすなど、それ相応の損害は与えられます。これが非装甲車両や敵の陣地になると、なおさら効力を発揮できるため、歩兵の火力支援には十分でしょう。
また、M3以降では軽量化が進み、重くて高価なジャベリンと比べて、「気軽」に使える兵器になりました。
多目標に使える汎用性も考慮すると、重量やコスト面での利点が目立ち、根強い人気の理由といえます。
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