二刀流!79式対舟艇対戦車誘導弾の性能とは?

自衛隊の対戦車ミサイル発射機 陸上自衛隊
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戦車も上陸舟艇も狙う

陸上自衛隊が保有する火力のうち、上陸してくる敵を迎え撃ち、戦車も上陸用舟艇も撃破するミサイルがあります。

それが「79式対舟艇対戦車誘導弾」というもので、水際防衛戦での貴重な打撃力として、2023年まで運用されました。

対戦車ミサイルは装甲車両を狙うとはいえ、陣地・建物を攻撃できるタイプもあって、アメリカの「ジャベリン・ミサイル」はその一例です。

ところが、79式は戦車だけではなく、舟艇も狙える珍しい利点を持ち、陸自ならではの「二刀流兵器」でした。

  • 基本性能:79式対舟艇対戦車誘導弾
重 量 33kg
全 長 1.57m
直 径 0.15m
速 度 毎秒200m
射 程 4,000m
価 格 1発あたり約1,000万円

この大型対戦車ミサイルは「重MAT」とも呼び、川崎重工業が1960〜70年代に開発したシステムです。

ミサイルを収めた発射機に加えて、照準器や送信器で構成されており、戦車と舟艇という性質が異なる目標を攻撃できます。

しかし、ミサイル本体だけで33kgもあるため、人力での運搬は難しく、トラックで展開場所の近くまで運び、そこで設置して使う仕組みです。到着後は三脚に載せて準備を行い、3名の隊員(射撃手、照準手、弾薬・通信係)で発射します。

有線誘導式のミサイルは電波妨害に強いものの、命中まで照準器で狙い続けねばならず、その間に反撃されるリスクが高いです。それゆえ、発射機と照準器を50mほど離して、なるべく照準手を遠ざけるようにしました。

ただ、50mは安全圏からはほど遠く、「87式対戦車誘導弾(中MAT)」の200mと比べると、爆風や飛び散る破片で死傷しやすい距離です。

訓練での発射(出典:陸上自衛隊)

重MAT対戦車用の成形炸薬弾、対舟艇用の2種類の弾薬を使い、海岸から離れた場所で待ち伏せるべく、4,000mの射程距離を確保しました。

前述のとおり、ミサイルは重さ33kgの「ヘビー級」にあたり、戦車や装甲車は十分に撃破可能です。さらに、対舟艇戦では小型揚陸艇はもちろん、「AAV-7」のような水陸両用車も戦闘不能に追い込みます。

着上陸侵攻では橋頭堡の確保までが勝負になり、装備・物資を揚陸される前に撃破せねばなりません。だからこそ、沖合いの揚陸艦には対艦ミサイルを放ち、直接迫る上陸用舟艇には重MATなどをぶつけます。

89式装甲戦闘車からの発射(出典:陸上自衛隊)

ちなみに、重MATは89式装甲戦闘車も装備しており、車内を含めて計4発が搭載されています。

これは主に対戦車戦用とはいえ、戦況次第では海岸付近まで進み、対舟艇戦ができるようになりました。ただ、89式装甲戦闘車の重MATは通常型とは違い、両者に互換性がないことから、別々の運用になってしまいます。

地上発射タイプは引退

陸自は1995年まで240セット以上を買い、対戦車小隊を中心に配備してきました。

ところが、現在はさすがに陳腐化が否めず、当初は96式多目的誘導弾を後継にしたものの、高コストのせいで更新が進みませんでした。しかも、2010年に誤発射事故が起きるなど、老朽化にともなう弊害が現れました。

こうしたなか、87式対戦車誘導弾とともに更新するべく、新たに「中距離多目的誘導弾」が開発されました。

その結果、地上発射型は2023年に退役しましたが、87式装甲戦闘車に搭載したタイプまだ使われています。

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